札幌の時計台もどきの小屋や「倍返しするぜ!」と書かれた奇妙な看板……。愛知県岡崎市の最恐カオス・スポット「ネオ・キタロー村」。もはやどこから突っ込んでいいのか分からないほどの摩訶不思議な施設を作り上げたのは御年82歳になる吉口 章さん。村同様、超個性的な“村長”を訪ねると、事態は思いもよらない方向に向かうのだった。
噂には聞いていたが
徳川家康公を主人公にしたNHK大河ドラマ「どうする家康」で盛り上がる岡崎市。CREAWEBの編集K氏が運転する車でおよそ30分、岡崎城のある中心街から北東方面へと向かうと、突如、森の中に謎すぎる小屋やモニュメントが建ち並ぶ一帯が現れた。おお、これが噂に聞く「ネオ・キタロー村」か!
ファンタジー? メルヘン? ……いや、どうも様子が違う。車から降りてみたが、人の気配はなく、門には鍵がかかり柵で囲まれている。その柵にもびっしりと木札がかけられており、呪文のように小さな文字が書かれていた。どうやら今までやってきたメディアのようだ。
中には入れないものの、門柱からして異彩を放っている。その横にくりぬかれた目の周りに白い縁取りをした不思議なトーテムポール君がこっちを見ている。
それだけではない。彼の頭の上には「アマビエ」と書かれたクリスマスツリー型の真っ赤な鳥の巣箱が乗っている。なぜアマビエ? 鳥も躊躇するのか、一羽も暮らしている様子はない。
その周りには、1メートル四方の小箱の中にお稲荷さんらしき石像が置かれ、手製の鳥居にはペットボトルで作られた風車がカラカラと音を立てている。
ううむ。何かのまじないなのだろうか。道の反対側に目をやれば、どこかで見たことのある白い建物が……これは札幌時計台のミニチュアではないか! 岡崎城なら分かるがどうして札幌なのか。
そして、横には岡崎市の公式キャラクター「オカザえもん」らしき顔が描かれた看板が。その「オカザえもん」の吹き出しが気になって、近づいてみれば「倍返しするぜ」!(笑) 恐ろしくてゴミを捨てようと思う人はいないだろう。
あまりにも自由で天真爛漫すぎる「ネオ・キタロー村」に圧倒され立ち尽くしていると、その森の中から、ねずみ色のジャンバーと迷彩パンツの男性が現れた。
「先日、連絡くれた東京の人?」
「もしや村長の吉口章さん!?」
「おお、よく来たっちゃ~!」
意外だった。これだけインパクトを残す村の村長だから、「芸術は爆発だ!」なる岡本太郎のようなアク強めの人物を想像していたのだが、少なくとも見た目は、ごく普通の優しそうな「おじいさん」であった。しかし、ほっとしたのも束の間、吉口さんは怒涛のようにキタロー村の思い出を話し始めた。
2023.03.11(土)
文・写真=白石あづさ