この記事の連載

 こんにちは。ライターの白石です。CREA WEBで浮きまくっていたこの謎連載も無事に2回目を迎えることができました。

 さて、前回に続き福島県小野町にある東堂山の「昭和羅漢」をご紹介します。羅漢とは煩悩を捨て、悟りを開いた尊いお坊さんのこと。ここでは約500体もの表情豊かな羅漢様が待っているのですが、予想を覆す驚きの展開に、前回は駐車場にいた数体について書いただけで力尽きてしまいました。

 あと480体くらいあるのにどうするんだ? と青ざめるばかりですが、後篇では、巻いて巻いて、百花繚乱の欲望も渦巻く個性豊かな羅漢様を最後までご紹介したいと思います。よろしくお付き合いください。


見られてはまずい本なのか?

 昭和60年、小野町の町長による「昭和の還暦の年。昭和に生きた証を残そう」と町民に呼びかけたことで奉納が始まった東堂山満福寺の「昭和羅漢」。駐車場を背に杉並木の参道を進んでいくと、その参道脇にも羅漢様が鎮座している。

 夫婦で奉納した人も多く、ネクタイを締めソロバンをはじく真面目そうなお父さん羅漢の横で愛犬にギューッと抱きついているお母さん羅漢を見て、ああ、抱きしめるなら長年連れ添った夫より犬なのか、など家族関係をあれこれ想像しながら歩くのは楽しい。

 と、そこに、なぜか本で顔を隠している羅漢が。

 生前、強烈に恥ずかしがり屋だったのか、文字が老眼でよく見えないのか、それとも見られてはまずい本なのか。

 上からのぞき込むと、じーっと文字を追っているのが分かる。背中に苔がワサワサと生えるほど、熱心に読んでいるその本のタイトルを知りたい。

2022.11.05(土)
文・写真=白石あづさ