抜群のスタイルとファッションセンス――女の子の憧れをこれでもかと詰め込んだ香山リカこと「リカちゃん」。前回、ご紹介した小川町(福島県)の「昭和羅漢」の近くに「リカちゃんキャッスル」なる施設があると聞いて寄ってみました。

 「かわいい! 懐かしい!」といった記事を書こうと思っていたのに、人生いろいろあった中年になってから訪れると、また違って味わい深く見ることができるから不思議。素敵なリカちゃんの写真と知らざれる謎のファミリーストーリーとともに、最後までお付き合いください。


 小野小町誕生伝説が生まれた福島県田村郡小野町。広い田んぼにのどかな里山、藁ぶきの古民家がポツポツ残る日本昔話のような風景の中を車で走る。水も空気もきれいな土地で小町はきっと肌がつるつるだったのだろう。そんなことを考えながら窓の外を眺めていたら、突然、シンデレラの物語に出てきそうな白亜の立派なお城がドーン! と現れた。

 「リカちゃんキャッスル」という施設名だけあって、西洋風の外観だとは思っていたけれど、ここまで本物に寄せた立派なお城とは思っていなかったのでうろたえる。いきなり異世界に転生した漫画の主人公の気分とはこういうものであろうか。

 お城の前には、手入れが行き届いた美しい西洋庭園が。まさに夢の世界。ああ、子供の頃は「白馬に乗った王子様が迎えにきてくれて、城で幸せに暮らす」という夢を見ていたような気がする。ぐうたらな私だけかもしれないけれど、あのシンデレラの話って他力本願を助長させるよなあ。

 あの頃の自分に「途中で落馬して辿り着かない王子もいるんだよ。手に職つけたほうがいいよ」と早めに教えてあげていたら少しは人生が変わっただろうか。そんなことを考えながら、お城に入ると金髪のリカちゃん(のパネル)が真っ赤なフリフリドレスで迎えてくれた。目もパッチリでスタイル抜群! うん、後光が射してます。こんなにかわいくては、川崎大師の初詣くらい王子たちで大渋滞しそうだ。

思ったより大家族であった

 国民的美少女人形のリカちゃんがこの世に誕生したのは1967年である。私が遊んでいた70、80年代のリカちゃんにママやフレンドがいるのは知ってはいた。しかし、展示室に貼られた「リカちゃん家系図」なるものを見て驚いた。

 リカちゃん、まさかの6人兄弟の長女!? いつのまにこんなに増えていたのか。しかも女子大生にしか見えない若々しすぎる香山織江ママは33歳。この時代にすごい子沢山である。双子に三つ子、一番、手がかかる幼児や赤ちゃんだ。

 さらにペットの犬や猫、インコの世話まである(犬と猫は三匹ずつ!)。それでいてファッションデザイナー業もこなしているって、もはや千手観音くらいすごすぎる。

2022.12.11(日)
文・写真=白石あづさ