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 巨体と巨体がぶつかり、角と角がからみあう。千年近い歴史ある日本の闘牛が、今も各地で行われているのをご存知でしょうか? ウシたちの晴れ舞台を見に新潟県小千谷の闘牛場へ行ってきました。かっこいいけれどほのぼのした“推しウシ”たちの激突を前編・後編に分けてお送りします。

【前篇】推しのウシこと“推しウシ”が激突! 巨体がぶつかる「牛の角突き」はほのぼのとした新潟県小千谷の名物


4代目「牛太郎」登場!

 前篇ではまだ幼い3歳デビューの新牛やヤンチャな若牛たちの闘いを紹介したが、中盤になると中級と呼ばれるウシたちが登場する。後半戦の最初に登場したのはムチムチボディの「権次郎(ごんじろう)」。権次郎のように低い声で唸るウシは気が強く闘牛に向いているという。

 対するはその名も4代目「牛太郎(ぎゅうたろう)」。まさに雄牛のなかの雄牛といった名前だが、牛持ちとして登場したのは水色のハッピを着たかわいい子供たち。闘牛場のそばに立つ東山小学校の子供たちが代々、飼っているらしい。

 アナウンス席に呼ばれた小学生が牛太郎について紹介する。

 「2、3代目と違って、4代目の牛太郎は角が短いです」と解説する横で、すでに試合は始まり、牛太郎は必死に権次郎と組みあっている。「せーの! ヨシタ―!」と声を揃えて応援する子供たち。

 「これからも愛情をこめてエサをやったり、フン掃除も丁寧にやってあげるので、強いウシになってほしいです!」と語る子供たち。卒業生には素晴らしい勢子になった子もいるらしい。取組を終えた牛太郎は拍手喝采を浴びて誇らしげだ。ウサギやヤギなどを飼っている学校は数あれど、ウシ……しかも闘牛を育てている小学校は全国広しといえど、東山小学校だけであろう。

2023.10.28(土)
文・撮影=白石あづさ