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地元の居酒屋で……

そう言って向かいにポンと座ったTさん。
クラス行事や移動教室の時に話はしたものの、正直言ってTさんの小学生ながら不良っぽい雰囲気に距離を取っていたSさん。しかし、大人になってから会うと意外とスムーズに会話が進んだそうです。
「まさかSが地元で居酒屋やりながら、アイドルにハマって休日は遠征三昧とは想像してなかったわ」
「わからんもんやろ。ほら、連絡先交換! せやし、S、何日かこっちおるんやろ? ほんならうちの店、顔出してや。さっき話しとったJとかAもまだ地元おるし常連やねん。久しぶりに小学校んときの話でもしよや!」
◆◆◆
そうしてSさんは実家に戻った翌日の夜、Tさんが経営している地元の繁華街にある小さな居酒屋の暖簾をくぐりました。時間とお酒はあっという間に進み、気がつけばいい気分で大笑いしていたそうです。。
「なあTちゃん、今日もう店閉めて、みんなでカラオケ行こや!」
「お前、勝手なこと言うなって。他にお客さん来たらどうすんねん!」
「来るかいな! 来るわけないって! 俺が保証したるわ! なぁ、Sもそう思うやろ?」
「まあ……来んやろなぁ」
「お前らなぁ……しゃあないな。ほな、閉めるか」
「ほんまに閉めよったぞ、こいつ!」
2025.08.11(月)
文=むくろ幽介