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伊達政宗が愛した秋保の名湯を心ゆくまで

 秋保温泉の歴史は古く、はるか古墳時代後期にさかのぼるといわれます。皮膚病を患った欽明天皇がこの地で沐浴したところ完治したことから、別所温泉(信濃御湯)、野沢温泉(犬養御湯)とともに「日本三御湯(にほんさんみゆ)」のひとつとされていました。また藩政時代には伊達政宗も秋保の湯を愛し、以来、伊達家の入湯場として大切にされてきました。

 そんな歴史ロマンあふれる温泉を楽しむなら、まずは湯小屋の大浴場へ。名取川のせせらぎをイメージした回廊のアプローチに期待が膨らみます。

 内風呂は、自家源泉かけ流しの「あつ湯」、心身ともにリラックスできる「ぬる湯」の2つがあり、外には石組みの露天風呂。秋冬は特に星空が美しく、渓谷をぬける爽やかな風を感じながら五感を解放するひとときを過ごせます。

 泉質は「ナトリウム・カルシウム-塩化物泉」。肌当たりがやわらかく旅の疲れを癒すのに最適で、さらに抗菌作用のあるメタほう酸と、肌のバリア機能を向上させる作用のあるメタけい酸を豊富に含み、カルシウムとの相乗効果で肌荒れにアプローチする“美肌の湯”でもあります。

 ゆっくり温泉を楽しんだあとは、湯上がり処でリラックス。ご当地ドリンクで喉をうるおしましょう。ここでは、毎日16時からミニ温泉講座「温泉いろは」を開催。「界 秋保」の湯守りが、秋保温泉の歴史とともに泉質や効果的な入浴法をレクチャーしてくれます。

渓谷に抱かれたテラスの足湯でじんわり温まる

 館内には温泉を楽しめるスポットがもうひとつ。渓谷をもっとも間近に感じられるトラベルライブラリー「せせらきラウンジ」です。「せせらき」とは「せせらぎ」の古語で、「その時々」という意味もあるそう。

 毎日15時30分から22時は、季節の和菓子や名物の仙台駄菓子、地元「秋保ワイナリー」のワイン、MCGのクラフトジンなどの宮城県にちなんだドリンクが用意され、その時々を自由に楽しむことができます。

 渓谷に抱かれるようなテラスには、源泉を引いた足湯も併設。のんびり温まりながら自然に身を委ねたり、渓流に面したカウンターテーブルで眼下を流れる清流を眺め友と語らうのも楽しいひととき。夜には、和洋楽器の生演奏もあり(季節や天候により室内で開催)、昼間とはひと味違う神秘的な風情に浸ることができます。

 また、毎朝7時からは、呼吸を整えながら体を伸ばす「うるはし現代湯治体操」を実施。「界 秋保」独自の渓流釣りをイメージした動きも加わり、体の隅々まで酸素を行き渡らせると、次第にお腹が空いてきます。

2024.12.08(日)
文=伊藤由起
写真=志水 隆、伊藤由起
写真協力=界