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 首都圏から車で約2時間。八ヶ岳南麓の「星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳」(山梨県北杜市)は、国内屈指のワインリゾート。前篇では、土地のワインをテロワールごと味わうアクティビティ、ワイン好きのための特別なゲストルーム、ワインと野菜をふんだんに使った料理のマリアージュをご紹介します。


ワインが生まれるブドウ畑でアペロを

 リゾナーレ八ヶ岳のある山梨県北杜市は、個性豊かな小規模ワイナリーが多く点在する、いま注目のエリアです。日照時間が日本一長く、降雨量は少なめで、朝晩と昼の寒暖差が大きいというブドウ栽培に向いた条件が揃い、2008年には日本で最初のワイン特区(※)に認定されています。

 そんな地域の特性を生かしたアクティビティが「葡萄畑アペロ」(毎週金・土・日曜、祝日15:40~16:50開催、参加費は大人1人4,500円。8月31日まで)。アペロとは、夕食前にお酒や軽食を楽しむフランスの習慣です。

※酒税法の例外的な規定で、一定条件下での小規模生産が可能な地域。

 アペロの会場は、ホテルから車で10分弱の「小牧ヴィンヤード」。北に八ヶ岳、南に甲斐駒ヶ岳を望む、なだらかな傾斜地にブドウ畑が広がり、シニアソムリエとしての経験も豊富なオーナーの小牧康伸さんとご家族が迎えてくれます。

 ちなみにヴィンヤードは、主にワイン用のブドウを栽培する農園を指す、フランス由来の英造語。こちらでもメルロー、カベルネソーヴィニヨン、バルベーラ、ソーヴィニヨン・ブランを中心に栽培しています。

 畑を案内してくれる小牧さんのお話は、ブドウの品種や栽培に関することだけでなく、畑に咲く花や昆虫たち、周囲の山々で楽しむ登山のこと、星空の素晴らしさ、この地の歴史や縄文遺跡に至るまで幅広く、ワイン好きはもちろん、初心者や飲めない人も飽きさせません。さすがベテランソムリエ。

 畑見学のあとは、お楽しみの試飲タイム。白は畑の前に設えたテーブルで、赤は英国製のコンサバティー(サンルーム)で、小淵沢産のチーズとともにいただきます。ワインはいずれも小牧ヴィンヤードのブドウでつくられたオリジナルで、アルコールが苦手な方には、同じブドウでつくられたジュースも用意されています。

 「ワインは、ブドウの品種や生育環境、その年の出来具合に味が左右される、もっとも自然なアルコール飲料。だからこそ土壌にこだわり、無農薬、無化学肥料で、大切にブドウを育てています」と、小牧さん。

 そんなふうに丹精を込めた畑で、テロワールを感じながらいただくワインは、格別のおいしさ。来年は敷地内に待望のワイン醸造所を立ち上げる予定とのことで、今後の展開が楽しみです。

2024.05.10(金)
文=伊藤由起
写真=志水 隆