CREA2026年春号の「美容は、楽しい? 美容は、苦しい?」特集が、現在好評発売中! CREA WEBではその一部を抜粋してご紹介します。 

 なぜ私たちは、これほどまでに美容に心をかき乱され、救われるのか。美容の世界を長年見つめてきた齋藤薫さんが、その業と光が入り交じる「美容のパラドックス」を紐解きます。(全2回の1回目/続きを読む


コンプレックスや負い目があるほど、キレイが爆発する令和の美容パラドックス

 昔からコンプレックスをバネに美しくなるというベクトルはあったものの、背景にある物語も同時に訴えられるSNSの力で更なる奇跡が起きやすい。

 インフルエンサーのギュテは、高校2年で全身脱毛症を発症。髪も眉毛もまつ毛まで失うが、中学2年からのメイクオタク。眉毛もまつ毛も1本1本丁寧に作り込むメイクは「整形級」とたちまち話題に。メイクはやはり究極の欠点克服、-を+300%にする爆発的パワーがあることに気づかせた。

 多様性万歳の令和は、カミングアウトからの復活にこそ拍手を送り、姿形の変貌に感動を覚える時代なのである。

「美人」の意味をあっけなく変えた、ちゃんみなの破壊力

 「醜いブスが歌ってんじゃないよ」容姿への誹謗中傷に悩み、そのストレスで一気に痩せたら一転「きれいになった」と言われ、強烈な違和感とともに美しいって何なのか? との怒りを含んだ疑問から生まれた曲が「美人」。

 この曲を知ると“美人”がいきなり取るに足らない野暮ったいものに思える。なぜか? “かっこいい”は美に勝るからだ。

 誰かが超絶かっこよく、美人はダサイと言えばそれが真実になるほど、かっこよさは全てを凌駕する。ましてや「前例がないのは怖いかい ならお手本になりなさい」「あの彼女を助けなさい」と歌った通り、作ったHANAがまた“実力の暴力”と称されるほどのかっこよさで従来の美の定義を破壊した。

 私自身、完全に価値観を持っていかれ、今この人に激しく憧れ、かっこよさ恐るべしを痛感しているのだ。

次のページ ミセス大森元貴が「メイク」という武装で手にしたもの

CREA 2026年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。