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最後はやさしい味わいのスープ茶漬けで〆

 “串は骨”と書かれた名刺の言葉通り、今もなお小橋さんは開店ギリギリに骨をはずし、そこから串を打つのだそうです。それは、なるべく直前まで骨をはずさないことで鮮度を保っておきたいという思いから。

 焼きの加減を見つめる目線はまるで獲物を狙う動物のような鋭い研ぎ澄まされたもので、そのときばかりは私もあまりくだらない話を持ちかけないようにしようと心がけております。

 ついうっかり、話しかけたときがあったんですが、そのときの小橋さんはまるで夢から覚めたかのような「あ、あれ?」というドッキリ顔でこちらを向いたことがありました。それくらい集中しているということなんだと、そのとき気付かされました。すいませんでした~。

 お酒の話に戻りますが、ワインを飲むとき以前はボトルで頼んでいました。けれども最近は、焼いてもらった部位に合わせてというのが気に入っています。1本で1杯のみ切れるときもあれば、そうでないときもありますが、なんとなくゆるめにペアリングしてもらうのも最近の楽しみです。

 お酒を飲んだ後、〆ないという人もいるという話をたまに聞きますが、私は断然〆る派。もう1軒行きたい場合でもお店ごとに〆てから次へと向かいます。ここではいつも鶏スープか、お腹に余裕があるときはスープ茶漬けを。ダンナが一緒のときは、卵かけご飯かそぼろご飯を半分こにしています。

 ところでこのスープ! これがヤバイ。ほんのりきいた塩味の奥に広がる鶏スープのやさしい味わいは、胃袋を温め、包み込み、またはじめから飲み直せるくらい。どんなに飲みすぎたなーというときでも、このスープを飲めば立て直しできるので、ここでは鬼に金棒、くらいの気持ちで気持ちよく飲んで、食べちゃってます。

焼鳥 こばし

所在地 神奈川県鎌倉市大船1-20-14
電話番号 0467-37-6803
営業時間 17:00~22:00
定休日 日曜、月曜
Instagram @yakitorikobashi

赤澤かおり(あかざわ・かおり)

料理雑誌の編集部を経て、フリーランスに。料理と旅の編集者として活動。料理本のほか、30年以上通い詰めるハワイについての執筆、単行本編纂も多数。近著に「人生にはいつも料理本があった」(筑摩書房刊)、編著に「いざ、豊島屋」(KADOKAWA刊)。
Instagram @kaoriakazawa.akalohasunny

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Column

赤澤かおりの鎌倉ひとり飲み

鎌倉で暮らしながら、料理編集者として飛び回る毎日を送る、赤澤かおりさん。どんなに忙しくても赤澤さんが元気いっぱいなのは、地元・鎌倉でお酒を飲む時間。このシリーズでは女性のひとり旅も多い鎌倉で、「ひとり飲み」に優しいお店をご紹介します!

2024.12.09(月)
文=赤澤かおり
写真=榎本麻美