この記事の連載

カウンター越しに小橋さんの生き方が伝わってくる

 メニューは、かしわ、つくね、はつ、せせり、さび、血肝、手羽先、かっぱに加え、季節の野菜焼き、そして〆の卵かけご飯、そぼろご飯、焼鳥丼、スープ茶漬け。私の場合、いつも焼きはおまかせでお願いし、お腹がいっぱいになったところで、そろそろ〆たい旨を伝える感じ。好きな部位をそのつどお願いするのもありです。

 コの字型のカウンターの向こうでは、焼きのときに使用するうちわを背中にさし、焼き場の前で炭の具合や火加減にまで細かく目を配りながら、お客さんのお皿やグラスの空きをチェックし、ときにはお客さんとの会話も楽しみ、さらにはお店でかけているレコードを返すことまで、いつどうやって気づくのだろうというくらい隙がない華麗な動きの小橋さんが。

 それを眺めながら次は何が出てくるかなぁと、お酒を飲みながら待つのがいい時間です。ここで飲むお酒はほぼ、私の場合、グラスの白ワイン。ワインは自然派ワインなので安心しておまかせのものをいただいています。

 それ以外にもビール、ハイボール、日本酒、焼酎、サワー関係などまでいろいろあり。ですが、断然、ここでは白ワイン派。で、血肝のときだけ薄めの赤をお願いしています。これがまた、肉汁がジュワッと広がる香ばしい焼鳥によく合うんです。

 ちなみにこちらで使っている炭は紀州の土佐備長炭。器は小橋さんが岡山出身ということで備前焼き。と、これもまた隅々までピシーッと行き届いている感じが気持ちいい。

 そもそも小橋さんは焼鳥の道に入る前はさまざまな職業についていたそうで、DJをやられていたこともあれば、衣装の仕事をしていたこともあったそうで、そんな最中に東京・渋谷の焼鳥屋さんの手伝いをしたことから焼鳥の奥深さにハマってしまい、東京・西麻布のとある焼鳥屋さんに修業に行くまでになったんだそう。

 そしてついには就職もやめて、焼鳥の道へと突き進んできたというわけ。人生、何があるかわからないもんですね。

 でも、自分の興味の先を信じてスッと人生のベクトルを動かせる人はカッコいいし、清々しい。このピシッと美しく行き届いている感じは、小橋さんの潔い生き様そのものという気がしました。

2024.12.09(月)
文=赤澤かおり
写真=榎本麻美