この記事の連載
- 漢方【前篇】
- 漢方【後篇】
大事なのは日々の食生活
「『肺』が弱っている人は、汗をかくような辛いものの取り過ぎに注意してください。潤いを与えてくれて『肺』を元気にしてくれる白いものを中心に食べるようにしましょう」
松浦さんによると、漢方の考え方では辛いもの全般がダメなのではなく、肺の働きをサポートするものはOKなのだとか。
「乾燥を促す唐辛子やスパイスではなく、ネギや大根などです」
なるほど、確かに白い食べ物ですね。
また、「乳製品もやめたほうがいいでしょう」ということなのですが、乳製品の中でも発酵食品のヨーグルトは、一般的には「腸内環境を整える」といいますよね。健康によいイメージがあるのに、どういうことなのでしょうか?
「発酵食品という意味では、日本人は味噌などの麹を使った食品との相性がいいですね。一方、ヨーグルトは発酵食品ではありますが、その中のカゼインがよくありません」
(え、カゼインって、聞いたことがあるけど、悪い成分なのだっけ?)とさらに伺ってみると、「カゼインは腸での消化吸収の負担になってしまうので、脾の働きを弱めてしまう」とか。
実は副鼻腔炎の鼻水はドロドロやねばねば状態の粘性になっているのですが、そういう粘性の鼻水のある時に粘り気のある食品を食べるのはよくないというのが漢方の考え方。調べたところ、カゼインとは乳製品の中でも「凝固するタンパク質のことで、牛乳から脂肪とホエイを取り除いた残りの不溶性固形成分のこと」。となると、チーズもダメってことなのでしょうね……。結構食べているのでショックです。
「グルテン同様、カゼインも腸での消化吸収の負担になり、脾の働きを弱めてしまうため、にらさわさんだけでなく、控えていただきたいです」
また、ほかに控えたほうがいいと言われたのは、夏野菜のオクラや生姜。
オクラはねばねばする様子からいかにも粘性の鼻汁のある時にはよくなさそうな印象ですが、生姜はどうしてダメなのでしょうか。
「にらさわさんは、今、上半身の熱と下半身の水の流れをよくする胃腸の弱りがあるため、下半身が冷えやすかったり、上半身がほてりやすくなったりしています。そのため、体を温めて発汗させる生姜を取ると、頭部が熱くなり、乾燥がさらに進みます。よって、今のにらさわさんには、生姜はデメリットが大きいのです」
なるほど!
代謝がうまくいっておらず、乾燥している今の私には、一般にはよいとされている生姜も漢方の考え方ではダメージになるということなのでしょう。つまり、一般的によいとされる食品でもやみくもに取るのはよくないということになのかもしれません。
「はい、まさにその通り。まずは自分の体の状態を知って、今の自分に合った食べ物や食べ方を選ぶのが大事です。漢方薬も同様で、自分の状態をきちんと知って合ったものを選ぶのが基本です。漢方は長く飲まないと効かないと言われがちですが、そんなことはありません。正しい食事を取ったうえで、その人に必要な漢方薬をきちんと飲めば1週間で効果を感じることが多いです」
漢方を1包から販売しているのは、必要な量を必要なだけ取ってほしいからだと松浦さん。
こんなふうに、体質や体調を診て、食べ方から教えてくれるお店が近くにあったら、どれだけ心強いだろうと心底思いました。
後篇では、漢方の考え方や自分で不調を判断するための目安となる方法などを引き続き松浦さんに教わります。
松浦尚子(まつうら・ひさこ)さん
薬剤師・漢方薬剤師・養生アドバイザー。漢方薬局を営む両親のもと、幼い頃から漢方が身近な環境で育ち、自身も薬剤師の道へ。薬剤師として多くの病院や調剤薬局に勤務。2021年からLAOSIに参画。養生や漢方によるセルフケアをより身近にするべく店頭に立つほか、インスタライブや商業施設でのPOP-UP、音声メディアでの発信など活躍の場を広げている。
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にらさわあきこの日々是実践美容道
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2024.10.31(木)
文・写真=にらさわあきこ