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◆竹林

 翌朝は少し早起きをして、嵐山の人気スポットである「竹林の小径」を散策。エヴァンさんがずっと訪れたいと思っていた、「憧れの場所」と言います。背の高い竹を見上げながら、ゆっくり歩き始めたエヴァンさん。

 「日本ならではの美しい風景ですね。セミや鳥の声など、自然の音がいい。こういう緑豊かなところでは、朝の光が映えますね。きっと夜もきれいなんだろうな」と、語りました。しかし、しばらく歩くと、あまりのセミの大合唱に「セミはやっぱりやかましいですね。支配的な音だ。僕としては、もっと小鳥が鳴いてくれるといいんだけど」と、ニヤリ。

 幼少期を過ごした故郷の森にも思いを馳せながら、途中で野宮神社も参拝し、トロッコ列車の線路も渡ってお散歩は終了。おだやかな眼差しで、日本の美しい風景を心に刻んでいるかのようでした。

◆朝食

 宿の部屋に戻ると、お楽しみの朝食です。提供されるのは、旬の野菜たっぷりの「嵐峡の朝鍋」。昆布と鰹の出汁が体にやさしくしみ渡ります。この日の野菜は、レタスや壬生菜、豆苗、カラフルトマト、たまねぎ、なめこ、大国しめじ、しいたけなど。お揚げや生麩も添えられ、鱧はさっと出汁にくぐらせていただきます。締めには卵を加え、雑炊にすることも。

 「朝ごはんから野菜がいっぱいでいいですね。とってもおいしい」と、エヴァンさん。お豆腐や漬物、ご飯も味わいながら、「日本の朝食は小さいものがいっぱいあって、小鳥がついばむように食べられて大好きです。僕は、朝食を急いで食べるのは嫌いなんだ。仕事の前だと急いで食べなくてはいけないけれど、今日はゆっくり食べられてうれしいな」と、すっかりリラックス。窓の外に広がる緑豊かな景色も楽しみながら、至福のひとときを過ごしていました。

朝鍋朝食

料金 4,598円(サービス料込)

◆舟遊び

 旅のクライマックスは、目の前を流れる大堰川での舟遊びです。舟枠に北山杉やヒノキ材が使われ、銅の錺金具で装飾された「星のや京都」専用の雅な屋形舟「翡翠」を貸し切り、いざ! 舟の名前そのままに美しい翡翠色の水面をゆっくり進むと、両側に緑あふれる峡谷の絶景が広がります。

 「緑が美しくて、心地いいですね」と、くつろいだ様子のエヴァンさん。「不思議と、中南米やアフリカでカカオを探しに行く舟のことを思い出しました。こんな風にエレガントではないんだけれど、これくらいのサイズの舟に乗っていくんですよ。安全性もこれとは全然違うかな」と、カカオ産地に頻繁に足を運ぶエヴァンさんならではの感想も。川面を抜けるやわらかな風が頬をくすぐります。

 舟の上では、野点籠での抹茶体験も。自ら点てた抹茶を心静かに味わい、「おいしいです。これで僕も平安貴族の気分を味わえたかな。いや、やっぱり、僕は貴族じゃないから、貴族の気分はわからない」と、茶目っ気たっぷりに話したエヴァンさん。

「でも、僕は探求者だから、いろんなことを経験してみたいと思っています。この2日間で新しい経験をいろいろできて、とても楽しかった」と語り、旅を締めくくりました。

屋形舟「翡翠」の舟遊び

料金 51,000円/1組(サービス料込)

 日常から解き放たれて、美しい世界観と日本ならではのもてなしに身をゆだね、いにしえの都の文化に思いを馳せながら過ごす「星のや京都」の休日。忘れられない経験が、そこに待ち受けています。

星のや京都

所在地 京都府京都市西京区嵐山元録山町11-2
電話番号 050-3134-8091(星のや総合予約)
宿泊料金 1泊1室あたり136,000円~(サービス料込、食事別)
客室数 25室
チェックイン 15:00/チェックアウト 12:00
アクセス 阪急嵐山駅より徒歩約10分、京都南ICより車で約30分
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/hoshinoyakyoto/

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2024.09.16(月)
文=瀬戸理恵子
写真=長谷川潤