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コミュニティをデザインするために地元食材を使用

 東京ドームおよそ24個分の大きさを誇る、世界最大級のショッピングモール「ドバイ・モール」の中には、イギリスの高級スーパー「Waitrose」があります。世界各国から集められたさまざまな食材の中に混ざって、UAE産の野菜や果物が並んでいる姿からは、この国の農業に対する本気度を垣間見えるはず。

「私たちは、サステイナブルかつ季節性のある料理を重視しています。地場のものにこだわることは、生産者を含む地元のコミュニティをサポートする、そのデザインを描くことでもあるんです」

 そう話すのは、「Orfali Bros(オーファリ・ブロス)」のオーナーシェフ、Mohamad Orfaliさん。ミシュラン・ビブグルマンにも選ばれるなど、いまドバイでもっとも熱視線を送られるレストランの一つです。

 といっても、店内に気取った雰囲気や堅苦しさはありません。陽気でカジュアル。昼時になると、どこからともなく常連客が集まり、スタッフと笑い話が聞こえてきます。その光景は、「Orfali Bros」がコミュニティのハブになっていることを物語っています。

「ここで提供するものは、私たちが旅から得たインスピレーションを織り交ぜた料理です。私たち自身が食べたい料理なんです(笑)。国境を越えるような想像性豊かなレストランを作りたかった」(Mohamadさん)

「『シシュ・バラク・ア・ラ・ギョーザ』は、ホットオイル、ガーリックヨーグルト、松の実、ミントを添えた和牛餃子です。私のフードスタイルは、アジア料理からもインスピレーションを受けています。しかし、私は自分たちの料理をフュージョンだとは思っていません。我々は常にフリービルドを好む。今あるものを維持しながら、新しい何かを生み出すことが好きなんだ」(Mohamadさん)

 発酵緑茶にカラマンシーやタイムをブレンドした「エルダーフラワー・コンブチャ」、ウルシ科の低木で果実を乾燥させて細かく砕いた香辛料「スマック」を利用した「スマック・コンブチャ」、発酵白ブドウジュースに麹とフェンネルを加えた「焙煎大麦・コンブチャ」、食通をうならせるオリジナルのコンブチャがずらりと並びます。ドバイは「モクテルの宝庫」でもあるのです。

「200以上の国籍を持つ人々が暮らす国際都市ドバイでは、すべての人を満足させる食の個性が求められる。私たちの食の個性は、3人の兄弟、シェフ、家族、そしてチームから生まれています。地場の生産者はもちろん、チーズメーカー、パンメーカー、肉屋、手工芸品店……私たちの料理はそうしたチームがいるからこそ、皆を満足させられる。コミュニティ料理を作らなければいけないんだ」(Mohamadさん)

Orfali Bros

所在地 Dar Wasl Mall , Al Wasl Road, Jumeirah, Dubai
https://orfalibros.com/

2024.03.05(火)
取材・文・写真=我妻弘崇