●人間の善良さや尊厳を信じて作った作品
――そういう社会的に深刻なテーマの作品に、フランシス・ンさんやロレッタ・リーさんといった香港映画ファンおなじみのキャストを起用するということは、リー監督の狙いなのでしょうか?
彼らのような商業映画のスターを起用することによって、あまり関心が持たれることのない、地味に思われる社会のテーマも注目してもらえるという狙いです。いろいろな考えがあるとは思いますが、私はそういうところまで計算をして、映画を作るようにしています。
ただ、彼らプロの役者は、脚本によって、演じる役によって、芝居を使い分けられるのは当然のことなので、「彼らのこれまでのパブリックイメージを打ち破ってやろう」というような狙いはないですね。
――ちなみに、リー監督が好きなフランシス・ンさんの出演作は?
『ザ・ミッション/非情の掟』や『インファナル・アフェア 無間序曲』の彼も好きですし、アン・ホイ監督の短編『我的路(日本未公開)』でトランスジェンダーを演じた彼も好きです。でも、いちばん好きなのは『香港の流れ者たち』の彼ですね(笑)。
――そして、本作も映画賞で高い評価を受け、満を持しての日本での劇場公開となります。
『香港の流れ者たち』は、私たち作り手が人間の善良さや尊厳を信じて作った作品だといえます。ホームレスたちの過酷な日常を描いた作品ではありますが、決して暗い映画だとは思っていません。ですから、日本の映画ファンや香港映画ファンにも楽しんで観てもらいたいです。
2023.12.22(金)
文=くれい響