この記事の連載

 7日間で薬膳の基礎を学ぶ、短期集中連載「谷口ももよの“一日一薬膳”」。

 年齢を重ねると起こる、さまざまな身体の変化と上手に向き合っていくためにも、自分の身体と対話しながら、ゆるく薬膳をはじめませんか? 薬膳知識のはじめの一歩を、薬膳料理研究家・谷口ももよ先生に教わりました。


大豆は一日一回食べるべし

 「大豆は身体にいい」と耳にしたことがありませんか? そう、大豆は毎日、身体に取り入れたい素晴らしい食べものなんです。

 その栄養の中でもまず一番に挙げたいのは「大豆タンパク質」。タンパク質は私たちの身体を構成する上で欠かせない栄養素で、大豆にはお肉に含まれているのと同じぐらい豊富に含まれていることから、大豆は“畑の肉”と呼ばれます。「大豆タンパク質」は血中のコレステロールを低下させ、血圧上昇を抑えるといわれているんですね。

 それから、粘膜など細胞の構成に欠かせない「大豆レシチン」や、活性酸素を抑制する働きがある「大豆サポニン」は血栓を予防したり、老化予防にも効果があるといわれています。

減少するエストロゲンを補う効果も

 そして何より女性に嬉しいのは「大豆イソフラボン」。この「大豆イソフラボン」は女性ホルモンの「エストロゲン」と似た働きをする点で注目されています。女性は早いと40代からこの「エストロゲン」が減少しはじめ、ほてり、寝汗、イライラなど更年期障害に悩まされる方が見られます。

 症状がひどい場合は漢方薬などに頼ってほしいのですが、女性ホルモンを活性化させるためにも、まずは毎日、大豆製品を食べていただきたいのです。しかもなんといったって低カロリー! 脂質が少ないですし、ダイエットにもおすすめです。

 東洋医学では胃腸を整えたり、利尿効果、疲れにも効果があるとされ、ジメジメした梅雨の時期には特におすすめの食材です。

推し食材はアレンジ無限大の“豆腐”

 大豆を使った食材といえばお豆腐ですね。一番手軽です。そのままで十二分に美味しいし、最近は種類もとっても豊富です。もともと、お豆腐は中国から日本に伝来したもの。東洋医学とともに多くの食文化が日本にもたらされましたが、より繊細に進化を遂げ、日本の食卓には欠かせないものになりました。

 今や和食の人気の高まりはもちろん、「ミートフリー運動(肉を食べない食習慣を推奨する運動)」が声高に提唱され、ビーガンの人々にこぞって食されるようになったおかげもあって、お豆腐は世界でも注目されています。

 でも、水がきれいで、大豆の種類も多く、各地でこんなに美味しいお豆腐が食べられるのは日本だけです。国内を旅行する時、その土地のお豆腐屋さんに立ち寄ってみるのも楽しいんですよ。食べないなんてもったいない!

 もちろんアレンジも無限大にできます。炒めたり、煮たり、茹でたり、揚げ物にしても美味しく食べられます。私は日本豆腐マイスター協会の理事も務めているので、その素晴らしさの普及活動に加え、レシピ制作など、日々楽しみながらお豆腐について研究しています。お豆腐は大好きな、“推し”の食材です。

 ただし、季節や体調によって、おすすめの食べ方は変わります。気温が低く、身体が冷えている時は湯豆腐にして、逆に気温が高く、身体が熱っぽい時は冷ややっこで召し上がってくださいね。

2023.11.19(日)
文=大滝美恵子
写真提供=谷口ももよ