この記事の連載

 7日間で薬膳の基礎を学ぶ、短期集中連載「谷口ももよの“一日一薬膳”」。

 年齢を重ねると起こる、さまざまな身体の変化と上手に向き合っていくためにも、自分の身体と対話しながら、ゆるく薬膳をはじめませんか? 薬膳知識のはじめの一歩を、薬膳料理研究家・谷口ももよ先生に教わりました。


髪は命でなく、余りもの!?

 以前、テレビのCMなどで「髪は女の命」とよく耳にしましたよね? 艶のある長い髪がさらっとなびく画面が思い浮かびますが、今はさまざまなヘアスタイルが楽しめるようになりましたし、若い子はこんな言葉、知らないのではないかしら。

 東洋医学では「髪は血の余り」といわれています。どういうことかというと、血液は生きる上で必要な栄養素や物質を体中をめぐって各臓腑に届けますが、その最後に届けられる場所が頭髪。最後に残った栄養しか髪には届かないのです。つまり、血が足りない人は髪まで栄養が行き届かないので、パサパサになりがちに。髪の潤いを高めるには、血を補うことが必要と考えられています。ハリやコシのある髪を作るには、しっかり血液になるものを食べ、身体の土台を作ることが重要なのです。

美しい髪を作る「黒きくらげ」

 まず、おすすめは黒きくらげ。中国・北京に行った際に、漢方薬局で体質を調べていただいたことがありました。その際、やりとりしていた看護師さんが執拗に「女性は黒きくらげを食べなさい」と語っていました。黒きくらげは低カロリーで食物繊維も豊富ですし、女性にはうってつけ。ほうれん草の何倍もの鉄分が含まれているので、貧血の方に食べてもらいたい食材です。

 よくフレッシュなものと乾燥したもの、どちらがいいか聞かれますが、乾燥させたほうが栄養価が高くなるので、効果を考えたら乾物の方がいいですね。でもフレッシュな黒きくらげをスーパーで見かけたら、せっかくですから独特な食感を楽しんで食べてみてください。必ず一度火を通しましょう。味にクセがないので、そのまま刻んで炒めたり、お味噌汁に入れたりしてもいいですね。ほかにレバー、ほうれん草、プルーン、棗(なつめ)や枸杞(くこ)の実も血になる食材です。

2023.11.18(土)
文=大滝美恵子
写真提供=谷口ももよ