「私のあの時のカン、あってたやん」って(笑)

pecoさんがryuchellさんと交際をはじめたのは19歳の時、ryuchellさんから告白されたのがきっかけだった。21歳のときに結婚を決めたのも、プロポーズを受けたから。「ryuchellからたくさん愛を受け取った」と語るように、これまでの恋愛関係を疑う気持ちは一切ない。

 はじめてryuchellを見た時、「目が大きくて肌がきれいで王子様みたい!」と思いました。同時に、「この人は男の人が恋愛対象かも」という気がして片思いを覚悟してたら、告白もプロポーズもしてもらったんです。だからカミングアウトを受けた今となっては、「私のあの時のカン、あってたやん」って(笑)。それでも、一緒にいた8年間一度も疑ったことがなかったのは、それだけryuchellが私をちゃんと愛してくれたからなんですよね。

 だからこそ、ryuchellからカミングアウトされた時は本当に驚いて……これは夢かな? って。あの日から、私の中では「ビフォア/アフター」じゃないですけど、第二の人生なんです。映画とかで、膜みたいなのをバーンと破って向こう側に行くようなシーンがありますけど、あんな気持ちです。

 それからはryuchellのことを外で話すとき、「息子のパパ」と呼ぶようにして、「旦那さん」や「夫」という単語を一切使わないようにしたんです。そうして意識を変えたら、1、2カ月で自然と事実を受け入れることができていました。人間の適応能力って凄いですね(笑)。

 ryuchellは本当に優しいし、周りから求められたことをその通りできちゃう人。それが器用なところであり不器用なところでもあると思うんですけど……。「良き夫」としてメディアに取り上げてもらうことが増えたことで、本当の自分とのギャップに苦しんでいたようです。カミングアウトを受ける数カ月前から突然泣いて謝ってきたりして、理由はわからないけど、このままではryuchellが壊れてしまうと感じたほどでした。

2023.12.18(月)
Text=Natsumi Koizumi
Photographs=Wataru Sato

CREA 2023年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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