この記事の連載

 作家さんの手による、ぬくもりのあるうつわたち。生活に取り入れてみたいけれど、どんなものから加えていけばいいだろう――?

 「うつわのある暮らし」を始めるヒントを探りに、うつわの専門家を訪ねました。


◆Vol.1 お話を聞いた人 坂根さよみさん

 1992年に東京・駒場東大前にギャラリー「うつわ party」をオープン。用の美をたたえた良質なうつわのセレクトに定評がある。店名はホームパーティが好きという坂根さんの思いから。「おひたしと煮物のうつわ展」「酒器展」「冷たい麺のうつわ展」など、折々で開催される食と暮らしに寄り添ったオリジナルの企画展も楽しい。


うつわを買い揃えるなら、私ならまず八寸皿から

 「うつわを買い揃えていくなら、まず何から?」という問いですが、私ならまず「八寸皿」とお答えします。「寸」とは昔の単位で、今ですと八寸のお皿は直径が約24センチのもの。

 八寸のお皿は、食生活におけるベースの1枚になってくれます。ワンプレートディッシュに使うのもいいですし、パスタ皿、カレーなどを盛るお皿としても適しています。お客様が見えたときの料理の盛り皿にも。

 はじめにひとつ選ぶならば、明るい色のうつわがいいですよ。気持ちもアガりますし、食卓がやっぱり華やぎます。もちろん、「この色が好き!」という気持ちがあれば、それに従って買うのが一番です。

 絶対に映える色としては、黒もおすすめです。意外かもしれませんが、料理を盛ってみると黒い部分の面積は少なくなるので、さほど抵抗なくお使いいただけるはずです。他の食器とも実は黒って合いやすい色なんですよ。

 逆に白は、私はあまりおすすめしていません。最初に選ぶ1枚なら特に。白って料理の盛り方や盛る量、食材によっては殺風景になりがちというか、さびしい感じにもなりやすいんです。

2023.04.22(土)
文=白央篤司
撮影=平松市聖