めったに見られない‟島渡り”をするシカがいる?
そんなケラマ諸島の有人島4つの中でも、今回の阿嘉島は南洋の自然の濃度をより高く感じます。
![アダンの群生具合もワイルド。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/8/1280wm/img_a8eb94074666b6967376e699c3e8acdb288096.jpg)
周囲約12キロの阿嘉島のうち、人口300人足らずの島民のほとんどが暮らすのは、船が到着する阿嘉港周辺。碁盤の目のように道がのびる集落には、よろずやはあってもコンビニはなく、小さな給油所はあっても信号はありません。島内の移動はもっぱらレンタル自転車か、レンタルバイク。
![隣の島に暮らす恋人マリリンを思って“島渡り”を敢行した犬・シロの銅像。映画化もされました。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/3/1280wm/img_735cdbb104a1120026081af3de67a4d3174190.jpg)
メインビーチは島の北東に位置するニシバマ。西ではないのに“ニシ”と名付けられているのは、沖縄の方言で東西南北をそれぞれアガリ、イリ、ハイ、ニシと言うから。波照間の北西にあるビーチをニシ浜と呼ぶのと一緒ですね。
ニシバマは約1キロの白砂ビーチが続き、中央付近に海を一望できる展望デッキが築かれています。ここから海を眺めると、青が塗り重ねられた浅瀬の先に、嘉比島、安慶名敷(あげなしく)島、安室島が浮かび、その奥に大きな座間味島が控えています。
![島いちばんの人気ビーチ、ニシバマ。島々が折り重なる風光明媚な景色が広がります。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/8/1280wm/img_a84b78dbd806b00d2a8dfe36d924f624102722.jpg)
穴場好きには、島の西側のクシバルビーチが好評。中岳を越える、アップダウンの激しい道を行くこと約5キロ。徒歩では約1時間半、自転車でもかなりキツい道のりです。そのため訪れる人も少なく、粗削りな自然美が魅力です。
![行くのはひと苦労だけれど、その分、プライベート感が味わえるクシバルビーチ](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/2/6/1280wm/img_2603bc6d8dbe8b5cb9bcf60e79992fec102965.jpg)
また、目覚めて朝一番に訪れるのにも、一日の終わりを迎えるのにも、気軽に訪れることができるのが集落前にある前浜(メーヌハマ)。
前浜にはテーブル&ベンチも設置されているので、海を眺めるのに好都合。ある日、ここでお弁当を食べていたら、ガサゴソと低木の茂みから物音が。顔をふっとあげた瞬間、目が合いました。ケラマジカです。
![こちらが気になるのか、何度も振り向くケラマジカ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/8/1280wm/img_d81ed1e358f66b8589b82da20296f32d166573.jpg)
ニホンジカよりも小型でツノが短く、くりくりの大きな目が印象的。栗色のボディにハート形のお尻だけが真っ白なのもキュートです。
300年前に鹿児島から沖縄の久場島へ移入され、以来、南の島の環境に適応してきたケラマジカ。日本国内で最南限に生息する野生のシカで、国指定の天然記念物(屋嘉比島、慶留間島に生息するケラマジカのみ)でもあります。
![マイペースに浜辺を歩くケラマジカ。夜、集落では闊歩するケラマジカの蹄の音が。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/8/c/1280wm/img_8c566411d9edfe660ba71047ed0a040b144903.jpg)
島の人に聞くと、子供の頃は夜行性のケラマジカを観察しに、夜の山に登ったこともあったとか。それが今は集落へ下りてくるようになり、人への警戒心も薄れてきつつあるもよう。おまけに植木の新芽や農作物を食べてしまうので、島民にとっては害獣である一面も。
隣の慶留間島での縄張り争いに負けたオスのケラマジカが、阿嘉島へと海を泳いで渡る“島渡り”を行うこともあるとか。繁殖シーズンには運がよければ、ケラマジカの島渡りが見られるかも(めったに見られないようではありますが……)!?
![ケラマジカは慶留間島から橋を渡ってやってくることもあるとか。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/b/1280wm/img_6b2e22cd15d33ef569dd73e9a12b0d48124658.jpg)
2023.03.11(土)
文・撮影=古関千恵子