こっちがなんとかするからブチ壊して大丈夫です

――高橋さんの目に留まる芸人さんには、なにか共通する条件ってあるんでしょうか?

 やっぱり「いい人」ってことかなあ。いい人に報われてほしいからな~。でも、振り回されたいっていう気持ちもある。こっちが「ちゃんとやって」って言っても、ちゃんとやってほしくないというか。

 去年の4月にCSで金属バットの90分特番をやったんですけど、その中の20分くらいこっそりフースーヤの単独コーナーをやったんですよ。フースーヤもギャグしまくって全然ちゃんとやってくれなくて、めっちゃいい!! と思いました。「こっちがなんとかするから、ブチ壊して大丈夫です」って僕はすごい思ってて。

 面白い芸人さんはあふれすぎてるじゃないですか。それに伴って面白いコンテンツもあふれすぎているので。特に、この年末年始とか皆さんも感じたと思うんですけど、(観たいコンテンツが多すぎて)全部観れない!! 絶対追いつかない。

 取捨選択が必要になったときに、コアなファンは「なんでも観よう」ってなると思いますけど、ライトな層に届かないとコンテンツとしてはバズらない。ライト層に届けるためには「おもしろ+1」が必要なんです。+1っていうのは、事件やハプニング、感動とか。「おもしろ」の他になにかの要素が必要だと最近感じますね。

 「ヤギと大悟」(テレビ東京)は面白いし、ほっこりする。「水曜日のダウンタウン」(TBS)の(囲碁将棋)根建さんが「Hondaのシビック買いたい」って騒いだ回も、おもしろと感動があったりとか。面白いのは当たり前になっちゃってるから、「誰々がこんなことしたらしいよ」みたいな事件が必要。それこそ、「ブクロフライ!!!」の初回で(パンプキンポテトフライの)山名さんが大遅刻してきたんですけど、例えばああいう事件。

囲碁将棋のラジオ「囲碁将棋の情熱スリーポイント」(GERA)のグッズ。高橋Pはガンガン普段使い中とのこと。
囲碁将棋のラジオ「囲碁将棋の情熱スリーポイント」(GERA)のグッズ。高橋Pはガンガン普段使い中とのこと。

――でも、事件って狙って起こせるものじゃないから難しいですよね。狙ってるのが透けて見えるとなんか冷めてしまいますし……。

 そうなんですよ! あくまで偶発的に起こるものなんですけど、そこにしっかり乗っかる嗅覚は持ってないといけないのかなと。

 例えば金属バットの友保さんがどん兵衛のでっかいやつを持ち帰って騒ぎになったのとかは、「これは大きく広がりそうだぞ~!」と思ったり。「事件を起こせるパワーのある人」が重宝される時代なのかもしれないです。秩序と破壊なら、破壊側の人。(ランジャタイの)国ちゃん、(モグライダーの)ともしげさん、(真空ジェシカの)川北さんとか。「この人がいたらなにか起こるかも?」っていう。

YouTubeチャンネル「もういっちょ」シリーズのグッズ。コントロール不能な二組に企画をブチ壊されるのも日常茶飯事だった。
YouTubeチャンネル「もういっちょ」シリーズのグッズ。コントロール不能な二組に企画をブチ壊されるのも日常茶飯事だった。

――「このライブではとんでもないことが起こるんじゃないか?!」という期待を込めてチケットを買うことが確かによくあります。もしくは後で「こんなヤバいことが起きた!」とSNSで話題になって、慌ててアーカイブ配信で追いかけるとか。

 本当それ! めっちゃ思いますね。もちろん純度100%のおもしろで突き抜けたら、それはそれで話題になると思うんですけど、コンテンツ制作者側からすると、面白いものを作ろうっていうのはまず基本。そこからなにかプラスアルファを考えないといけないなって思います。まあ、とんでもない時代ですよね。

――制作者側、裏方に注目しているお笑いファンもとても多いですよね。「この人が手がけた番組だから間違いないだろう」みたいな。

 だからSNSは大事なんですよね。自分で作ったものは自分でバズらせにいくというか。僕も、本当は(自分から発信するのは)好きじゃないんですけど、そんなこと言ってられない。

 ただ、今はYouTubeもライブ配信もTVerもあって、家で全部観れちゃうからこそ、実際に足を運んでライブ会場で観る、不便なもの、クローズドな空間のものももう少ししたらもっと評価されるんじゃないかと思います。そっちの価値も見直されると思うし、見直されてほしい。

 年始にNGK(なんばグランド花月)に行ったんですよ。やっぱ、すごかったっす。シャンプーハットとかの、老若男女を笑わせる強いネタが。それって配信じゃ伝わりきらない部分がある。やっぱり現場に足を運ぶことも忘れてはダメですね。

高橋雄作(たかはし・ゆうさく)

お笑い番組プロデューサー・作家。通称TP。2022年にテレビ朝日を退職し独立。YouTubeチャンネル「金属バット無問題」「10億円無問題」プロデューサー、ラジオアプリ「GERA」チーフプロデューサー、「stand.fm」コンテンツアドバイザーなど多方面で活動中。総合演出を担当する、人気ルームシェア芸人・板橋ハウスの特番「【ルームシェア】おでかけ板橋ハウス【冠特番】」(CS-TBS)が3月放送予定。
Twitter:@takahashigohan

Column

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ゲストの方に気になる話題を語っていただくインタビューコーナーです。

(タイトルイラスト=STOMACHACHE.)

2023.02.10(金)
文=ライフスタイル出版部
撮影=平松市聖