カカオ色の美しい店内で個性豊かなチョコを吟味
近年、台湾ではハイレベルなチョコレートブランドが次々と登場しています。そのひとつが、2021年春にオープンした台北市温州街の「TERRA土然巧克力專門店」。今回はこのブランドをご紹介します。
![明るくてスタイリッシュな雰囲気の店。「TERRA」とはラテン語で「土」の意味。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/b/1280wm/img_3bf276a3526fcfc6f2389974154634f5178510.jpg)
ここには、台湾の南部・屏東県内埔産のカカオ豆を用いたものから、カラスミ、ゴボウ、生薬などを入れた変わり種、さらには鉄観音茶味やピーナッツ味など、台湾らしさが感じられるものまで揃っています。
手がけるのはダニー・ヤン(楊豊旭)さん。<九日風>というチョコレートブランドの創業者であり、著名なジャムブランド「在欉紅」のエグゼクティブ・シェフでもあります。チョコレートの国際大会で何度も受賞したことがある実力の持ち主で、その経歴はとてもユニーク。大学と大学院で園芸を専攻した後、政府の開発援助プロジェクトでカリブ海諸国に赴き、農業指導をした経験も。一方、学生時代からチョコレートや洋菓子などが大好きで、いろいろな店に出かけては味比べを楽しんでいたそうです。
そんなダニーさんは北海道の旭川にあるチョコレート工房を訪れたのがきっかけで、ビーントゥーバー(Bean to Bar)に魅せられます。洋菓子作りの経験と豊富な農業知識をもとに、台湾では数少ないビーントゥーバーのチョコレート工房を立ち上げたのでした。
![カカオをイメージしたという店内。台中の人気建築家・張育睿がデザインを担当。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/9/1280wm/img_79a02da5c5cdfd32a5c350e5c5dc8916179116.jpg)
カカオ豆の発酵から乾燥、研磨、成型まで、チョコレートバーができるまでのすべての工程を自分たちでこなしているほか、カカオ豆の買い付けも行っています。欧米の業者からだけでなく、海外の農園からの直接仕入れもしています。これはかつて中南米で働いていた経験を生かしたもので、地元の友人たちに優れた農園を探すのを手伝ってもらっているのだそうです。
![店内では原料となるカカオ豆が展示されています。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/1/f/1280wm/img_1f714beacc2589deb4d50985fbd9a973182618.jpg)
「チョコレート作りは実験のようで楽しいですよ」と語るダニーさん。根っからの学者肌で、新しいフレーバーの開発に余念がありません。2023年はレストランのシェフたちともコラボし、これまでにないフレーバーを作っていきたいとのこと。
店内にはカフェも併設されており、自社のチョコレートを用いたケーキやドリンクを楽しむことができます。目玉となるのは、世界的にも珍しい窒素ガスを注入し、タップで注ぐチョコドリンク。「コーヒーやお茶も窒素ガスを注入するとまろやかな風味に変わるので、チョコドリンクでも可能だと思ったのです。世界でも初めてかもしれませんね」とダニーさん。
![スタッフが丁寧に注いでくれます。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/4/1280wm/img_648eb534bf9147bbab37b94d2a60923d188433.jpg)
窒素ガスを加えた「ナイトロチョコドリンク(氮氣冰巧克力)」はカカオの甘さとほろ苦さが絶妙に混じり合い、クリーミーな喉越しが印象的です。カカオ豆に水を加え、一晩寝かせたものに窒素ガスを加えた炭酸ドリンク「可可氣泡飲」も爽やかな風味。さらに、クラフトビール会社と共同で作ったチョコレートビールも試してみたいところ。
![右からカカオ炭酸飲料、ナイトロチョコドリンク、チョコレートビール。写真は撮影用で、本来は大きいサイズのグラスで供されます。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/c/1280wm/img_6cab52c41ecbf2e59511f8881aeda591136384.jpg)
お土産を購入するついでに、ぜひ店内で新感覚のチョコドリンクを試してみましょう。チョコレート尽くしの店内で新しい世界に触れられるはずです。
2023.02.03(金)
文・撮影=片倉真理