この記事の連載

コバルトブルーの海に面した風光明媚なまち、仙崎を散走

 金子みすゞ記念館のある仙崎は、古くから漁業で栄えてきたまち。長門湯本温泉からは、自転車で行くのもおすすめです(片道約30分)。長門湯本温泉発のレンタサイクルYUMOは、温泉街の中心にある「恩湯」で受付可能。E-BIKEの「BESV(ベスビー)」と、英国製の高級折り畳み自転車「BROMPTON(ブロンプトン)」の2種類から選ぶことができます。

 長門湯本温泉と仙崎を結ぶルート上には、7世紀後半建立の伽藍があったとされる、長門国最古の寺院跡「長門深川廃寺」や、すり鉢状の地形を巧みに利用して作られた野外劇場「赤崎神社楽桟敷」などの歴史遺産が点在。このエリアが古くから長門の中心地だったことを示唆しています。

 深川湾に面した仙崎西側の浜辺「さわやか海岸」からの眺めは、まさに絶景。透き通ったコバルトブルーの海の先には、青海島や向津具(むかつく)半島、金子みすゞの詩にもうたわれた花津浦(はなづら)と呼ばれる奇岩も見えます。こんな風に気になる場所に寄り道しながら、長門のランドスケープを堪能できるのも、自転車ならではの魅力でしょう。

 かつては捕鯨で栄え、いまも県内有数の水揚げを誇る仙崎漁港。岩礁に富んだ海岸線と、仙崎湾・深川湾・油谷湾という3つの内湾、沖合には対馬海流の激しい潮流と入りくんだ地形とがぶつかりあう好漁場に囲まれ、「仙崎ぶとイカ」「仙崎トロあじ」などのブランド魚介類でも知られています。漁業とともに水産加工業も発展しましたが、間接的に養鶏業や農業も発展してきたところが、ほかの港町には見られない仙崎ならではの特徴です。

 漁港の向かいにあるのが、広大な道の駅「センザキッチン」。新鮮な魚介類のほか、長門の畑で取れる野菜や果物など新鮮なまま直売しています。長門市内はもちろん、県内産のお土産物も、ここに来れば概ね揃っているとのこと。

 バラエティ豊かな飲食店も「センザキッチン」の魅力。旬の魚を豪快に盛り付けた海鮮丼や寿司、地元でおなじみの長州どりを使った焼き鳥や唐揚げ、ここでしか食べられない仙崎ラーメン、海由来の天然酵母が特徴のベーカリー、スペシャリティコーヒーのカフェなど、よりどりみどりです。

 例えば、バーベキューコーナー「グリルハウス」では、直売所で買った海の幸や山の幸を、自分で焼いて食べられるコーナーを併設。手ぶらで気軽にバーベキューが楽しめます。

 「ひものや食堂 ひだまり」は、「センザキッチン」のすぐ側に工場を構える「ひもの処 魚健」が運営する食事処兼干物店。仙崎漁港を中心に山口県北浦地方で水揚げされる旬の魚を、ひとつひとつ手作業で加工し、塩や味噌、塩麹など調味料にもこだわった干物やフライを定食として味わうことができます。魚本来の旨みを凝縮し、ふっくらと仕上げた干物は、お土産に最適!

 敷地内には、観光案内所「YUKUTE」や、木のおもちゃに親しむ「長門おもちゃ美術館」なども併設。長門の豊かな食材と、楽しい情報、充実した遊びを“調理”し、ゲストに振る舞う「センザキッチン」は、誰もが食べて・遊んで・くつろげるLDK(リビング・ダイニング・キッチン)のような場所なのです。

センザキッチン

所在地 山口県長門市仙崎4297-1
電話番号 0837-27-0300
営業時間 9:00~18:00(店舗により異なる)
定休日 第2木曜(8月、祝日は除く)、1月1日。臨時休業あり
https://nanavi.jp/senzakitchen

<レンタサイクル>
長門湯本温泉モビリティYUMO

https://yumotoonsen.com/yumo

 日本海=荒波というイメージを覆す、おだやかで色鮮やかな仙崎の海。夭折の童謡詩人、金子みすゞの詩も、この海と土地があってこそ生まれたと言えるでしょう。

 次回はふたたび長門湯本温泉に戻り、自然と文化が融合する音信川沿いのそぞろ歩きをご案内します。

次の話を読む【山口県長門湯本温泉を往く】暮らしと遊び、自然と文化が溶け合う音信川のほとりをそぞろ歩き