![温泉街を流れる音信川沿いの遊歩道は、そぞろ歩きを楽しめる仕掛けがあちこちに。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/f/1280wm/img_6ff0faf357f4d7c3b6c8331542133f4b607523.jpg)
長門湯本温泉は、音信川(おとずれがわ)沿いに広がるコンパクトな温泉街。川沿いの遊歩道をあちこち寄り道しながら歩くのが楽しい“オソト天国”です。
歴史ある萩焼の窯元に、郷土の美味、空き家をリノベーションしたカフェやバーなど、歩いて回れるエリアにお楽しみがギュッと詰まっています。お気に入りの場所がきっと見つかるはず!
![四季折々の表情を見せる清流に「おとずれ川テラス」が点在。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/2/1280wm/img_521403514624199f76e33251e3ae749b735743.jpg)
![国道沿いの駐車場から「竹林の階段」を下って温泉街へ。夜はライトアップが美しい。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/8/2/1280wm/img_8237f47cc3ffc2f1f451fc3801699fec706446.jpg)
![萩焼の若手作家の器が並ぶギャラリー・カフェ「cafe&pottery 音」。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/e/1280wm/img_6e8860a5a11d441516726a3cca5f4632310232.jpg)
「cafe&pottery音(おと)」は、江戸初期から続く地域の伝統工芸、萩焼深川窯(ふかわがま)の器を気軽に楽しめるお店。温泉街で進められている「空き家リノベーションプロジェクト」の第1号として、2017年にオープンしました。築50年ほどになるという昭和の家屋は、どこか懐かしい雰囲気です。
手仕事の温かみが宿る店内には、萩市在住の家具作家によるテーブルや、英国ヴィンテージの椅子。お店に入って手前が萩焼の展示販売スペース、奥がカフェスペースで、音信川にせり出したテラスもあり、春は川沿いの桜も眺められる人気スポットです。
![作家物の器でコーヒーや手作りのスウィーツを味わうことができる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/1/1280wm/img_0167632ee5866fdfaf29db4c2b5430ad290612.jpg)
![「ゴルゴンゾーラのチーズケーキ」600円(器は坂倉正紘さん)。「音信ブレンド」650円(器は田原崇雄さん)。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/d/1280wm/img_7ddedb65e32fc7e12886fc9a8ed6ade5384829.jpg)
常設で扱う器は、温泉街に隣接する「萩焼深川窯」の若手作家、坂倉正紘さん、田原崇雄さん、坂倉善右衛門さんの手によるもの。ひと口に萩焼といっても、やわらかな風合いからソリッドなものまで、多種多様なスタイルがあることがわかります。
カフェのドリンクやスウィーツも彼らの作品で提供されるため、作家物の器もぐっと身近に感じられます。オーダーごとにハンドドリップするコーヒーは、地元ロースターの豆と、萩焼深川窯がある三之瀬(そうのせ)の湧き水を使用。人気の「音信ブレンド」は、使うごとに味わいを増していく萩焼の奥深さと、音信川のせせらぎをイメージしたというオリジナルブレンド。力強くきれいな味わいです。
作家さんもたびたび訪れるそうなので、運がよければ作陶について直接お話が聞けるかも。日常の中に伝統文化が息づく、長門湯本の暮らしが感じられるお店です。
![コーヒーはテイクアウトも可能なので散策のおともにもおすすめ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/8/3/1280wm/img_834865d8d2350259d974c3f3d1007c7f557667.jpg)
cafe&pottery音(おと)
所在地 山口県長門市深川湯本1261-12
電話番号 0837-25-4004
営業時間 10:00~16:00
定休日 水・木曜
https://www.oto-cafe.jp/
![初夏にはホタルも見られる三之瀬川沿いに萩焼深川窯の五窯が点在。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/6/1280wm/img_f6052fcd21f82a093bbc102b8a185a13633300.jpg)
「一楽、二萩、三唐津」といわれ、古くから茶人に愛されてきた萩焼には、松本(現・萩市椿東)の松本窯、深川村三之瀬(現・長門市深川湯本三之瀬)の深川窯という、2つの流れがあります。長門湯本温泉にほど近い深川窯は、萩焼の開祖、李勺光の子孫や高弟たちによって開窯。現在も5軒の窯元が360余年の歴史と伝統を継承しています。
長門湯本温泉から、細い山道を歩くこと10分足らず。音信川につながる三之瀬川(そうのせがわ)が流れる静かな山里に、深川五窯はあります。そのなかの一軒、「萩焼深川窯 田原陶兵衛工房」を訪ねました。
![茶碗や水差しなどの茶道具は、さすがの品格。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/3/1280wm/img_d3c7de3e057ce70796879a74b0b7a66d448699.jpg)
![日常使いの器も、品よくやわらかな風情と温かみが感じられる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/1/1280wm/img_31f45a2f99f94e9f8149009e4c0230f8197332.jpg)
案内してくれたのは、新進気鋭の陶芸家・田原崇雄さん。13代田原陶兵衛(現当主)の次代を担う方です。東京藝術大学と同大学院では彫刻を専攻、2010年からこの地で活動されています。
「技術については、父をはじめ萩焼の先人から学ぶことができると思い、クリエイティビティを学ぶため彫刻科を選びました。いまは茶陶を軸とした萩焼の品格を落とさないようにしながら、暮らしに沿った器や自分なりの作品にも挑戦しています」と、田原さん。
萩焼は萩藩の御用窯として生まれたやきものですが、ここ深川窯では江戸期から「自分焼」と呼ばれた一般向けの器もつくられていたといいます。
「萩の土は複雑な色の変化が起こりやすく、同じ土、同じ釉薬を使っても、びわ色~灰色~桃色と変化するなど、さまざまな表情を見せてくれます。また、使い続けることによる経年変化を楽しめるのも萩焼の特徴です」
田原さんの手による普段使いの器は、こちらの店舗のほか「cafe&pottery 音」などでも購入可能。器との出会いは一期一会。お気に入りを見つけたら、ぜひ手に入れることをおすすめします。
![工房に併設された現役の登り窯。年に2回は火を入れるという。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/9/1280wm/img_79bad4ba014cbb034d3e6bef0e5a039c539134.jpg)
![名門の伝統を受け継ぎつつ、自然体で自身の作陶を追求している田原崇雄さん。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/3/1280wm/img_b35fa390b296aa302ed118aff3d301eb364188.jpg)
![日本の原風景を思わせる山里の木立に囲まれた工房。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/d/1280wm/img_4d98679405682f8f947b3dd14d1760d2911214.jpg)
萩焼深川本窯 田原陶兵衛工房
所在地 山口県長門市深川湯本1403
電話番号 0837-25-3406
営業時間 8:30~12:00、13:30~17:30
定休日 日曜(お盆、年末年始)
http://tahara-tohbe.com/
2023.02.07(火)
文=伊藤由起
撮影=榎本麻美