この記事の連載

つづ井さん[マンガ家]

Q1:最愛の一作

『動物のお医者さん』(佐々木倫子/白泉社)

 説明の必要もないくらい名作中の名作で、随分昔の作品ではありますが、今読み返しても面白さが色褪せることがまったくありません。ギャグマンガやコメディ作品が大好きでたくさん読みますが、いつどんなコンディションで読んでも面白いです。

Q2:マンガを読むスタイルは?

 紙派なので、単行本化してから自宅でゆっくり読みます。最近はSNSや公式ツイッターなどで発信もあり、よい作品に出合いやすくなって、他人にもすすめやすくなったのでありがたいです。

Q3:夜ふかしマンガ大賞に推薦した作品とその理由

『クジマ歌えば家ほろろ』(紺野アキラ/小学館)

 少し不思議な謎の生き物、クジマがロシアからやってきて、主人公の少年の家がじんわり変わっていく物語です。とにかくクジマが愛おしい! 可愛いとキャッチーと不気味と違和感がちょうどよく入り交ざった、秀逸なビジュアルだと思います。その独特の佇まいに、初めの数話は、いつクジマの口が首まで裂け人間を飲み込み始めるのか……と緊張感を持って拝読しておりましたが、まったくいらない心配でした。

『矢野くんの普通の日々』(田村結衣/講談社)

 いつの間にかケガだらけになってしまう天性のドジっ子・矢野くんと、そんな彼を手当てしたくてたまらないしっかり者委員長・吉田さんが、「矢野くんの普通の高校生活」を目指して奮闘するラブコメ。登場人物全員がとにかくよい子たちで、読んでいるだけで心が清らかになっていくよう。鈍感すぎ無自覚すぎな天然ふたりの一挙手一投足に、外野の私はいちいち「もどかしい~!」と悶え転び、かと思えば矢野くんの時折見せる人たらしな言動に吉田さんとともにまんまと〈フグゥ…〉と唸り、ピュアなふたりの一進一退に、何度も胸を押さえてときめきに浸りました。矢野くん、吉田さん、どちらもがんばれ! のこったのこった! のこったのこった! と、行司のように楽しませていただいております。

『三拍子の娘』(町田メロメ/ebookjapan/DU BOOKS)

 読後、自分も自分の生活を振り返り、愛でて大切にしたくなるような希望に満ちた作品。

つづ井(つづい)
マンガ家

デビュー作『腐女子のつづ井さん』(KADOKAWA)は「第20回文化庁メディア芸術祭」推薦作品に選ばれる。一介のオタク。元気で楽しそうな姿がTwitterでも評判。

つづ井さん最新作
『裸一貫! つづ井さん4』

「魂がオタク」なおひとりさま女子の日常を陽気に描いたコミックエッセイ。年を重ねてどんどんタフになっていく、アラサー女子の人生賛歌! 第4巻は愛犬の介護のため、里帰りすることになったつづ井さん。文藝春秋 1,045円

次の話を読むマンガ賢者6名が選ぶ「最愛の一作」 『黄色い本』『ダリアの帯』…… マンガ好きが選ぶ厳選の1冊をご紹介

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2022.12.13(火)
Text=Ritsuko Oshima(Giraffe)

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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