この記事の連載
田中香織さん[スピカワークス広報]
Q1:最愛の一作
『愛すべき娘たち』(よしながふみ/白泉社)
家族、夫婦、恋人、友達―様々な女性を主人公に描かれる、心と人生。2003年に刊行され、読んだ当時も深く響いた。その後読み返すたび同じように響くも、少しずつその形が変わってきていることが嬉しい。きっともっと歳を重ねていけば、さらに違った読み方ができるのだろう。何度も、何度でも、私が立ち戻りたくなる場所のひとつ。
Q2:マンガを読むスタイルは?
電子書籍も買いますが、基本的には紙で、単行本になってから読みます。
Q3:夜ふかしマンガ大賞に推薦した作品とその理由
『褒めるひと 褒められるひと』(たけだのぞむ/講談社)
人を褒めることは難しい。そして、褒められた言葉を受け止めることも難しい! クセの強い褒め方をする上司と、褒められて戸惑うOLのやりとりは、何度読んでも笑ってしまう。ふたりを取り巻く脇役たちのキャラの濃さもたまらない。ちょっと疲れたとき、元気がないときに、ふと本棚へ伸ばした手が辿り着くのはこの本。絶対に私を笑わせて、安心させてくれる。
『今夜すきやきだよ』(谷口菜津子/新潮社)
家事は苦手だが結婚はしたいバリキャリと、家事は得意だが結婚願望のない無名の絵本作家。同窓会で再会した女性たちが始めた、ふしぎなふたり暮らしの物語。社会人として今を生きる、すべての人に読んでほしい。自分ではうまく言葉にできなかった気持ちや迷いに気づけるかも。読後、タイトルを見返すと思わずにっこり。あとがきもいい。
『ブスなんて言わないで』(とあるアラ子/講談社)
丁寧に、真摯に、誰もが避けられない「美醜」を巡る問題に切り込んだ一作。答えはひとつではなく、誰しもにそれぞれの言い分がある。物語の行く末が気になって仕方ない。
Q4:各部門への推薦作品とその理由
●家族部門
『おとなのずかん 改訂版』(イトイ圭/小学館)
親しい男友だちを亡くした男。彼への気持ちは定かではない。それでもそれでも男は、誰よりも親友と家族になりたかった。そんな思いを抱えた男のもとに、親友の幼い娘と1枚のメモ、そして親友似の女との偶然の出会いがやってきて―。いろいろな家族の形、その中のひとつの物語。男の未来と心の落としどころが、気になる一作。
●青田買い部門
『スノウボールアース』(辻次夕日郎/小学館)
救世主と呼ばれながらも、小心者でコミュ障な少年と、彼と共に戦い、寄り添う巨大ロボット。宇宙で繰り広げられたふたりの戦いも、あの日で最後になるはずだった―。新人離れしたコマ割りと熱い展開に、心が躍る成長譚。今は4巻、このままどこまでも走り抜けてほしい。
田中香織(たなか・かおり)
スピカワークス広報
女性マンガ家(クリエーター)マネジメント会社・スピカワークスで広報を担当。元ジュンク堂書店の書店員で、マンガ大賞の実行委員でもある。
2022.12.13(火)
Text=Ritsuko Oshima(Giraffe)