●ムチャぶりからアドリブ力を学んだ現場

——2018年に舞台化、20年にドラマ・映画化と、パワーアップしていった鈴木おさむさん原作の「八王子ゾンビーズ」についても伺いたいと思います。

 とにかく台本が面白いんですが、「20分フリー(アドリブ)」という部分もあって、自由にやることほど難しいものはないという。僕が演じた瀧という役は、最初の舞台のときはほとんどセリフがなかったんですが、アドリブのときに先輩ゾンビたちにムチャぶりされるようになり、ドラマと映画では、どんどん出番が増えて、見せ場も作っていただけるようになりました。台本に「ここで瀧が一発ギャグをする」とか書いてあるのは本当に怖いですが(笑)、先輩たちの背中を見ながら、アドリブ力を学ばせてもらった現場でもあります。

——21年の2月にはCDデビューされ、22年5月には「さぐぱん」名義でもミニアルバムをリリースされました。

 昔から音楽は好きなので、とても嬉しかったのですが、メジャーデビューできたことについては驚きでしたし、今でも現実感がないです。「さぐぱん」に関しては、いわゆる横文字のカッコイイ感じの候補もあったのですが、あまりに恥ずかしすぎたので、あえてゆるキャラみたいなものにしたんです。歌に関しては、みなさんに望んでいただけるようであるなら、これからも続けていきたいです。

●かけがえのない作品となった初主演映画

——そして今回、初主演映画『海岸通りのネコミミ探偵』が公開されます。本作でバディを組むのは、テニミュ出身の先輩でもある和田正人さんです。

 「初主演映画」って、いい響きですよね! 素直に嬉しかったです。でも、僕が演じる猫塚照は、とても自然体な自由なキャラなので、変に気合いが入りすぎないよう心がけました。和田さんと共演できたのはもちろん嬉しかったですし、気さくな方なので、たくさん話しかけてくれて有り難かったですし、現場の空気も作ってくださる、とても頼りになる先輩でした。

——現場での印象的なエピソードを教えてください。

 ペット捜査の依頼をしてくる裕太役の子役・菊池爽くんの存在ですね。実生活では姉が2人いる末っ子の僕にとって、まるで弟ができたようで嬉しかったんです。2人の関係性が大事な作品でもあるので、いろいろふざけ合ったり、遊んだりもしました。ちなみに、この作品の撮影後には、実際に甥っ子ができたので、とても嬉しいです!

——自身のキャリアにおいて、どのような作品になりましたか?

 「初主演映画」で、とても共感できるキャラを演じられたこと、素敵な方たちと共演できたこと。とにかく、自分にとって、かけがえのない作品になったと思います。猫耳姿も含めて、きっとファンの方にも楽しんでもらえると思います(笑)。

——今後の希望や展望を教えてください。

 今後も面白い作品にたくさん出会って、多くの人にその存在を知ってもらいたいです。そうやって、みなさんの人生を豊かに彩る手助けができるように頑張っていけたらいいな、と思っています。あと、珍しいジャンルの作品に出会ってみたいです。例えば、日本ではあまりないホラー作品の舞台などに興味がありますね。とはいえ僕、怖がりなので、ホラー映画は苦手ですが……(笑)。

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牧島 輝(まきしま・ひかる)

1995年8月3日生まれ。埼玉県出身。2015年に俳優デビューし、翌16年のミュージカル「テニスの王子様」3rdシーズンに出演。その後も、ミュージカル「刀剣乱舞」や「炎炎ノ消防隊」などの人気舞台に出演。23年2月に帝国劇場で上演される「キングダム」にも出演するほか、21年にはミュージシャンとしてCDデビューを果たしている。

映画『海岸通りのネコミミ探偵』

2022年12月2日(金)より、シネマート新宿、ムービル、シネマート心斎橋ほかにて全国順次公開。

湘南の浜辺でいなくなったペットの猫ミミちゃんを捜す猫塚(牧島 輝)は、ペット探偵の猿渡(和田正人)の事務所を訪れる。その後、ミミちゃんはある夫婦のもとで暮らしていることが分かるが、猫塚は調査の報酬が払えず、代わりに猿渡の探偵業務を手伝うことに。そんな中、事務所に裕太が猫のゴン太を捜してほしいとやってくる。
©2022「海岸通りのネコミミ探偵」製作委員会
https://nekomimi-tantei.com/

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2022.11.25(金)
文=くれい 響
撮影=末永裕樹
スタイリスト=奥村 渉
ヘアメイク=永井友規