稽古はあまり好きじゃない。許されるなら本番だけやりたい(笑)
――稽古はお好きですか?
あまり好きじゃないです。許されるなら、本番だけやりたいです。まあ、そんなわけにはいきませんけど(笑)。
稽古場って、僕、けっこう緊張しちゃうんですよ。お客さんのいないところで、照明も蛍光灯。もちろん、一生懸命やりますが、やはりお客さんの前で衣装も照明もセットも整っている本番のほうが入り込めますよね……。
――今回は、KERA・MAPで以前上演された『キネマと恋人』に登場した架空の梟島が舞台なのだとか。「〇〇だり」「がっさ〇〇」など、真似したくなるような独特な方言が印象的でした。
面白い舞台でしたよね。僕なんか、あの方言が架空のものと、人に言われて初めて気づいたくらい(笑)、それほど自然でした。方言を発明してしまうなんてすごいです。今回は場所と方言が同じというだけで話は全く別になるそうです。
――共演で楽しみにしている人はいますか?
ほとんどのみなさんと今回初めてご一緒するので、興味津々です。松尾諭さんは最近ドラマ(『拾われた男』)にもなっていますしね、つかみどころのない面白い人だなあと思いながら見ています。ただ、ストレートプレイの稽古場ではみなさんあまり喋らないのでね……。
――ミュージカルとストレートプレイでは稽古場の雰囲気は違いますか?
お誕生会とお通夜くらい違うかな。極端に言えば、ですよ! (笑) ミュージカルは歌ったり踊ったりしますし、ストレートプレイは基本的に静かです。コロナ禍になる前は、稽古後に飲み会で親交を深めるという、昭和っぽいノリがありましたけど。いまはそれもできず残念。でも静かな稽古場もそれはそれで面白いです。
――下北沢・本多劇場に立たれるのは今回初めて。デビューが帝国劇場だった井上さんにとって、観客が見える距離というのはいかがですか?
お客さんの顔が見えたほうがやりやすいし、好きかもしれないです。もちろんそのぶん、芝居の嘘がすぐに見破られてしまうから、細やかな表現をしなくてはいけないけれど。でも、帝国劇場でもシアタークリエでも、クローズアップされても大丈夫なように、と思いながら演じているので、そういう意味では変わりはないかもしれません。
2022.11.06(日)
文=黒瀬朋子
ヘアメイク=川端富生
スタイリスト=吉田ナオキ
撮影=平松市聖