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 日本初演となるブロードウェイミュージカルの『ヘアスプレー』で、ヒロインの相手役、リンクにキャスティングされたのは、目覚ましい活躍でスターダムを駆け上がってきた三浦宏規さん。

 5歳のときにクラシックバレエを始め、“舞台好き”になった三浦さんはミュージカルの道へと導かれ、若手ミュージカルスターの一人として注目されている。今の彼の礎ともいえるバレエとはどのようにして出会い、今まで掴んできたどの機会を“人生の転機”だと実感しているのだろうか?

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想像もつかない“舞台”への扉が次々と開く

 「男の子がバレエを習うということは非常に珍しいことだと思うのですが、世の中の男の子が仮面ライダーのような戦隊もののヒーローに惹かれるように、僕はバレエダンサーの熊川哲也さんに憧れました。

 きっかけとなったのは、熊川哲也さんのドキュメンタリーのような番組を拝見したことでした。『ドン・キホーテ』など、ダンスをされている映像もいろいろとありましたし、熊川さんの日常生活の様子も映っていました。ダンスはいうまでもなく素晴らしいですが、そのとき見たすべてがかっこいいなと思ったんです。

 今振り返ってみると、バレエを始めた頃はミュージカルの舞台に立っているなんて、思ってもみないことでした。きっかけの一つとなったのは、バレエ以外の舞台に挑戦するために東京に来たことなのかなと思います。

 東京に来たからこそ、舞台に立って歌を歌い、お芝居をしているのであって、どれも来る前には想像もつかなかったことばかりです。ミュージカル『テニスの王子様』を演らせていただいているときにも、まさか『レ・ミゼラブル』に出演することになるなんて思っていませんでしたし、『千と千尋の神隠し』の舞台にハクとして立っていることも想像がつくはずがありません。

 これまでの舞台の経験の一つひとつが転機なのではないかと思いますが、バレエをやめて別の舞台に立ったことで180度変わりました。その原動力となっているのは、僕が“舞台が好きで舞台を演りたい”という気持ちが強いところだと思います。オーディションというチャンスがあれば全力で掴みにいきますし、ありがたいオファーをいただくこともあります。とても恵まれていて幸せだなと思います」

ミュージカル『レ・ミゼラブル』で史上最年少のマリウスに抜擢!

 三浦さんはプロも視野に入れて取り組んでいたバレエをまだ10代だったときに怪我などが要因となって断念した。その後もバレエ以外の舞台に出演する機会を得て、2016年にはミュージカル『テニスの王子様』の跡部景吾役で一気に注目を集める。そして2019年にはミュージカル『レ・ミゼラブル』に史上最年少のマリウス役に抜擢された。

 「僕が『レ・ミゼラブル』を初めて観たのは2017年の公演で、そのときはあまりにも感動して涙が止まりませんでした。一度だけでは物足りなくて、何とかチケットを取っていただいてもう一度観ることができました。その後オーディションのお話をいただき、ダメ元だけどトライしてみようかという気持ちで挑みつつも、絶対に受かりたいという100%の気持ちで臨みました。

 マリウスといえば、僕が尊敬するたくさんの先輩たちが演じてきた役です。オーディションでは経験があまりない中で、課題の曲をいただいて、右も左も分からなかったという印象しかありません。まさか自分が受かるとは思っていなかったので、マリウス役に選んでいただけたことは、僕自身が“びっくりした”というのが正直な感想です」

2022.09.17(土)
文=山下シオン
撮影=鈴木七絵
ヘアメイク=丸山晃穂(JYUNESU)
スタイリング=小田優士