6月頃と10月頃に訪れる棚田の絶景は見逃せない
花崗岩を基盤に、柔らかい凝灰岩と硬い安山岩からなる豊島。凝灰岩は“豊島石”とも呼ばれ、火にも強い特性から、桂離宮や岡山後楽園の石灯籠にも使われているそう。
豊島では鎌倉時代から豊島石の採掘がはじまり、最盛期には1,000人を超す石工がいたとか。現在は石丁場が閉じられているので、ほぼ流通していないけれど、1棟貸しの宿「ウミトタ」で建材となった豊島石に触れることができます。
そんな岩の層は、今でも島に恵みをもたらしています。
島に降った雨は、檀山に蓄えられ、岩の層を通して濾過されるのでピュアな水が実に豊富。檀山の麓にあたる東部の唐櫃岡には枯れたことのない湧き水もあり、「唐櫃の清水」と呼ばれています。これって、水が少ない瀬戸内の島々の中では、とても貴重です。
水に恵まれた豊島。唐櫃地区では地形を生かした棚田が、瀬戸内海へ続くように広がっています。サイクリングで目の前の下り坂の向こうに海と棚田が開けた瞬間、思わず歓声を上げてしまいました。
今、美しい棚田が広がっているのは、2009年からはじまった豊島棚田プロジェクトの功績。島民や行政などが手を取り合い、竹や雑草で荒れた休耕地の再生に取り掛かりました。
土と水が整った棚田は稲作、稲作ができない場所で土がいい場合は野菜、稲作と畑に適さない場合は果樹、それも難しいと鑑賞花。状況に応じて作物を変え、今では300枚を超えるほどに。のどかな里山風景を造り上げています。
特に絶景なのが、田んぼに水をはった6月頃、あるいは、稲穂が首を垂れる10月頃。初夏は水面に緑と光がキラキラと揺れ、秋は一面、黄金色に染まるそう。
2022.10.08(土)
文・撮影=古関千恵子