こだわり食材をチョイスしたモダン懐石

 夕食は洋の要素をうまく取り入れたモダン懐石だ。神奈川の食材を使い、見た目にも美しい。

 「旬菜」の器は、宿のロゴマークにもなっている「ご縁を結ぶ」「末永くつきあう」という意味をもった「あわじ結び」をイメージした陶器。ここに金太郎マスと高菜千枚蕪寿司を組み合わせた、美しい「箱寿司」や旬菜の料理がのる。

 メイン料理は神奈川県・南足柄の地で放牧飼育され、丹沢山麓のおいしい水で大事に育てられた相州牛のロース炭火焼き。秦野野菜が彩りを添える。

 この日のメニューはほかに、鮮魚のお造り、甘鯛炙り焼きなど。鱶鰭(ふかひれ)スープ煮の野菜は小田原から届いたもので、こちらも地産にこだわっている。

 また、ワインやノンアルコールのペアリングを頼めば、料理に合わせたドリンクを出してくれる。

 ノンアルコールのおすすめは、料理を邪魔しないすっきりとした味わいの、釜炒り緑茶「炒香(いりか)」。茶葉は、30年以上、農薬や化学肥料を使っていない茶園で育てられたもの。栽培過程にまで配慮した食材選びに頭が下がる。

 食事は0.5合の米を「一人釜炊き」。炊きたてご飯がつやつや、ピカピカなのは米も水もいいということだろう。食味ランク特Aを獲得したこともある「はるみ」という小田原のブランド米を使用している。

 ストーリー性のある食材をチョイスしているので、食通の人にもきっと満足のいく一夜となるにちがいない。

一夜でリフレッシュする“湯治セラピー”

 もう一つ、「はつはな」に来たらぜひ体験してもらいたいのが、Toji Wellness & SPA「まほろみ」だ。

 本来は「七日一回り、三回りを要す」といわれる「湯治(とうじ)」を、エステに凝縮した「湯治セラピー」を提唱していて、浄化、調律、循環を促す3つのセラピーを施し、心身をリセットするオリジナルメソッドだ。

 温泉水以外にも乳香(フランキンセンス)や塩、さくらんぼの種などを使ってまどろみをつくりだし、気・血・水を整える。

 「まほろみトリートメント」60分1万6,000円〜、「温泉フェイシャル」50分1万5,000円〜。4室(1室ペアルーム)なので早めの予約を。

 客室でまったりするもよし、館内の風呂めぐりに出かけるもよし、スパで心身をリセットするもよし。サステナブルでラグジュアリーな箱根の夜が、新しい癒やしをもたらしてくれることだろう。

はつはな

所在地 神奈川県足柄下郡箱根町須雲川20-1
電話番号 0460-85-7321
宿泊料金 1泊2食付 1人 (宿泊料\43,000+入湯税\150として)4万3,150円(消費税込)~
https://www.hakone-hotelhatsuhana.jp/

野添ちかこ(のぞえ・ちかこ)
温泉と宿のライター/旅行作家

「心まであったかくする旅」をテーマに日々奔走中。NIKKEIプラス1(日本経済新聞土曜日版)に「湯の心旅」、旅の手帖(交通新聞社)に「会いに行きたい温泉宿」を連載中。著書に『旅行ライターになろう!』(青弓社)『千葉の湯めぐり』(幹書房)。岐阜県中部山岳国立公園活性化プロジェクト顧問、熊野古道女子部副部長。
https://zero-tabi.com/

2022.10.07(金)
文・撮影=野添ちかこ