4つの貸し切り風呂を新設

 全室に露天風呂があるのに、男女別の大浴場を残したのも特徴的だ。大浴場は1階「竹の葉」(元やまざくら)と2階「山の端」(元女性大浴場)の2つで男女入替制。スロープカーに乗って坂を下るのは、異世界へ誘われるようでおもしろい。

 新設された貸し切り風呂は「川音(かわと)の湯」「静寂(しじま)の湯」「水面(みなも)の湯」「明灯(あかり)の湯」の4つで、場所はそれぞれ異なる。

遮るものがないインフィニティ風呂「川音の湯」

 その名の通り、須雲川の音が心地よく聞こえる「川音の湯」は、木々を眺める目線の先に柵がなく、開放的な半露天風呂。寝湯スペースのほか、1.1メートルの深さのある立ち湯スペースがあり、水中ウォーキングができるほど広い。お湯は「美人の湯」ともいわれるアルカリ性単純温泉、くせのないやさしい泉質だ。

 この日は雨が降っていたが、通路のみ傘をさして歩けば、湯船に屋根があるから雨でも濡れずに入ることができる。ライトアップされた緑の木々を眺めながら、雨音と川音が入り交じる幻想的な湯浴みが楽しめる。

吹き抜け天井から光が差し込む「静寂の湯」

 3階にある「静寂の湯」には外を眺める窓はないが、4階までの吹き抜けの天井から光が差し込み、幻想的な湯浴みができる。「瞑想をしたいから」と朝早くに予約をする人もいるようだ。

 木と石でできた浴槽は八角形。格子状の梁と柱の間から光が降り注ぎ、趣のある湯船である。

 利用時間は一組45分。宿泊予約時またはチェックイン時に予約を入れたい。

はつはなが取り組む、自然を守るエコ活動とは

 リニューアルにあたって、特筆すべきは「エコ」の視点だ。

 一つ目が客室アメニティの「脱プラ」。ホテルとアメニティの関係は切っても切れない。いいアメニティを置くことがホテルとしてのクオリティを表し、お客の満足度を左右するからだ。

 「はつはな」では今回のリニューアルにあたり、SDGsの観点(小田急リゾーツは「かながわプラごみゼロ宣言」に参画している)から、ホテルとしては大きな決断であろう使い捨てプラスティックアメニティ類の削減に舵を切った。

 客室にシャンプーやボディソープ、化粧水などのアメニティは備え付けられているが、使い捨ての歯ブラシ、ヘアーブラシ、かみそり、ヘアゴム、ヘアーキャップなどは一切、置くのをやめたそう。

 これは、「箱根の自然を守るため、ごみを減らし、CO₂を削減しよう」(奈須由美支配人)との考えからだ。お客様に歯ブラシなどは持参してもらうという、時代に合わせた取り組みといえよう。

 二つ目は、夕食時と朝食時に使う箸である。「箱根の里山景観の再生」「生物多様性の回復」「地球温暖化対策」に貢献することを目的に、夕食は箱根ヒノキの間伐材を利用した箸を用意し、使用後には持ち帰ってもらう。同様に朝食では、はつはながテーマとする「桜」の木を使った箸を提供している。

 三つ目は寝具である。ベッドはシモンズ社のものを採用しているが、掛け布団は羽毛ではなく、回収された海洋プラスティックを加工した中綿を使ったADVANSA社の「Suprelle™ blue」を採用している。

 寝心地は羽毛布団よりは重く、木綿布団よりは軽い。掛け布団1枚でペットボトル75本分のプラスティックを使っているという。

 そのほか、ラウンジで出すドリンクもフェアトレードコーヒーやオーガニックティーなど、サステナブルな商品選びをしている。

 見えないところでは、厨房から出る生ごみや食べ残しをバイオ処理することでごみ焼却時のCO₂削減にも寄与しているとのことだ。

2022.10.07(金)
文・撮影=野添ちかこ