週末に、心が洗われる別世界へ出かけてみるのはいかが。少し車を走らせれば、そこにはおもてなしの心に満ちた極上の宿が待っている。

 旅行作家の野添ちかこさんが、1泊2日の週末ラグジュアリー旅を体験。今回訪れたのは、岐阜県・飛騨市にある「八ツ三館」。かつて幕府の天領だった飛騨古川の古い町並みに立つ、創業160年の料亭旅館だ。

 名古屋市内からは約2時間30分、松本市内からは約2時間のドライブで到着。東京からは新幹線で名古屋駅まで行き、そこから列車やレンタカーなどで行くこともできるが、車で行けば松本を経由して約5時間30分。少し遠めだが、ドライブコースを満喫しながら向かうのもいい気分転換になりそうだ。


守り次ぐ伝統と品格。文化財の宿ならではの寛ぎの時間

 鯉が泳ぐ瀬戸川と、白壁土蔵が立ち並ぶ歴史ある町並み。「飛騨古川」と聞いてピンとくる人は、レトロな町並み散策が好きな人かもしれない。

 2016年に公開された映画『君の名は。』で、駅や図書館、バス停などが映画のモデルにもなった、のどかな田舎町だ。

 八ツ三館は、飛騨古川に佇む歴史ある料亭旅館。安政年間に初代が越中八尾(富山県)から移住して始めた宿屋で、屋号は出身地の「八」と、創業者の名前である三五郎の「三」をとったもの。

 昨日今日できた宿とは訳が違い、地域性と旬を感じられるような室礼に心を砕いていて、年季の入ったおもてなしを感じられる老舗の宿だ。

 玄関を入ると、着物姿の仲居さんが三つ指をついて丁寧にお出迎え。

 大きなトチノキをくり抜いた火鉢のテーブルでお抹茶とお菓子をいただいている間に、背の高さに合わせて客室の浴衣を用意してくれる。

文・撮影=野添ちかこ