モダンにリニューアルした客室「光月楼 池月」

 今回泊まったのは、昭和初期に造られた数寄屋造りの離れを本間として活用し、ベッドルームと居間をモダンにリニューアルした「光月楼 池月」。面積は76平方メートル、石畳敷きの床には床下暖房が入り、足元から快適だ。

 寝室はベッドルームだが、本間は一転、細やかな細工が施された欄間彫刻など意匠を凝らした昭和の数奇屋造りの趣を残している。雪見障子や床の間の違い棚、梅やシャクナゲなどの花々が描かれた襖絵に掛け軸など、室礼も美しい。

室内には番茶の茶香炉が焚きしめられ、館内で過ごす浴衣は2種類の用意。客室ではバスローブで寛ぐこともできる。

 大きな御影石をくり抜いた半露天風呂は1.6×2メートルもある楕円形で、やわらかな地下水が注がれている。窓を開け放てば、風のそよぎが気持ちいい。

 今回泊まった客室とは別棟にある、明治38(1905)年に建てられた木造2階建の「招月楼」(5室)は、当時の趣を残した客室に古い和箪笥などが置かれており、登録有形文化財の宿ならではの風情がある。

 また2022年7月には、6室あった「観月楼」の客室を3室にリニューアルする予定とのことだ。

伝統的な和の空間が広がる大浴場

 朱色の壁が印象的な廊下の先にあるのが、大浴場の「せせらぎの湯」。

 内湯は温泉の運び湯で、ジェットバスや立ち湯、りんご風呂などがある。露天風呂の釜風呂は地下水の沸かし湯だが、バラを浮かべた優雅な湯浴みが楽しめる。

 さらに有料の貸し切り風呂「おしどりの湯」は、夜10時以降は無料になる。

 風呂上がりに利用できる無料マッサージチェアが置かれたお休み処も、重厚な雰囲気の古民家風の造り。

 平成になってから造られた建物だが、黒光りする湾曲した梁は、新潟の古民家から運んできたもの。灯りをほどよく落としているため、そのまま眠りに落ちてしまいそうな心地よさだ。

 じゅうぶんに温まったところで、アロマテラピーのエステや、天然ハーブを蒸し上げたハーブボールでマッサージする「ハーブボールマッサージ」など、セラピーメニュー(要予約)を試してみるのもいいだろう。

 和の旅館には珍しく、この宿にはエステサロンが2カ所もある。

文・撮影=野添ちかこ