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和洋の栗を重ね、ラム酒が香る仕上げもご馳走

 そして、秋冬のアシェット・デセールと言ってやっぱり食べたくなるのは、「モンブラン」! ポイントは、和栗と洋栗の合わせ技です。

 「和栗のクリームのさらっとしたおいしさと、洋栗のクリームのねちっとした甘さをひと皿にまとめて、独創的なひと品に仕上げてみました」と、佐藤さん。ラム酒のシロップをしみこませたビスキュイと、洋栗のクリームを重ね、ホワイトチョコレートのクランチとラム酒漬けのマロン・コンフィを、食感のアクセントとしてちりばめています。

 その上に、和栗と穏やかにマッチするホワイトチョコレートのクレーム・グラッセ(卵不使用のアイスクリーム)と、酸味が洋栗にすっきり感を与えてくれるレ・リボ(フランス・ブルターニュ地方の発酵バターミルク)のアイスクリームを、横並びにひとすくいずつ。薄いバニラのシガレット生地をかぶせてバニラ風味の生クリームを絞り、全体を覆うように和栗のクリームを絞りかければ、その姿はモンブランに。仕上げに客席で、ラム酒が香る温かなカスタードソースが注ぎ入れられます。

 食べ進めると、深みあるコクやまろやかさ、さわやかな酸味、パリパリ、ザクザクとした食感、華やかなラム酒の香りがかわるがわる現れて滋味深い栗と混じり合い、実に表情豊か。日本とフランスの融合によるめくるめくハーモニーに、思わず顔がほころびます。

フランス定番の味をごまかさずにおいしくつくる

 四半世紀以上フランスで活躍するなかで、日本人パティシエである自分がやるべきこととして佐藤さんが見出したのは、「フランスの文化や伝統に敬意を払い、絶対にごまかしが効かないフランスの定番の味を、フランス人がびっくりするくらいおいしくつくること」。

 フランスの世界観や文化を日本人である自分が絶対に崩してはいけないと話し、「食べ終えたフランス人が、『実は、日本人のシェフがつくっているんですよ』と聞かされて、『えー! 普通にフランスのものじゃん! すごくおいしい!』って驚くようなものをつくる人でありたい。それが、フランスで長く暮らし、仕事をしてきた自分の証だと考えています」と、語ります。

 そんな思いのこもったアシェット・デセールがつくられる様子を間近で見られる、7つのカウンター席は、フロアよりも一段高くなった、通称“ステージR”とも呼ばれる特等席。パティシエたちと語らいながら、今のパリがそのまま映し出されたエスプリあふれる美味を舌つづみを打ち、心和むぜいたくな時間が楽しめます。

Régalez-vous(レガレヴ)

所在地 神奈川県鎌倉市御成町10-4
電話番号 0467-81-3719
営業時間 8:30~19:00(18:30 L.O.)
定休日 不定休
Instagram @regalez_vous_kamakura

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2022.09.30(金)
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵