世紀を超えて愛される花器、アアルトベース

 フィンランドを代表する近代建築、そしてデザインの巨匠であるアルヴァ・アアルトが、1936年に発表したフラワーベースです。フィンランド語で波を表す「アアルト」の名前にふさわしい、流れるようなフォルム。20世紀の匠が生んだ傑作は、21世紀の今も、イッタラの工房で職人の手吹きによって製作されています。

「アアルトの建築もプロダクトも好きです。だから、このフラワーベースは長年の憧れの品でもありました。花器なのに、何も活けずにただ置いてあるだけで美しい。だからこそ最初は、“どうやって活けるんだろう”とも思いました。何度か活けているうちに、意外と深く考えなくても決まることに気付いたので、今は気軽に使っています。どの向きを正面にしても素敵。プロダクトの完成度の高さを感じます」

 菊池さんの暮らしを垣間見て、「製品は作られたときに完成するのではなく、使っていくうちにその人の暮らしの中で完成する」ことを、目の当たりにしました。育っていく製品の背景には作った人の物語があり、使い込むにつれ自分たちの物語が刻まれていく。

 そして、そうした余白を持った品々を見極める菊池さんが束ねるお花もまた、祈りや願いに似た余白があることを思い出しました。

●教えてくれたのは……菊池裕子さん

フラワーデザイナー。大学卒業後、会社員やインテリアショップ勤務を経て、本格的に花の世界へ。2011年にスタートした「Malmö(マルメ)」の花は、スタイリストや芸能関係者にも人気が高い。現在は、店舗を持たないオーダー制のフラワーアトリエを運営。Instagram @malmo_flower

松山あれい

プランナー&ライター。日用品、マンガ、ファッション、ドライブ情報など、ジャンルを問わず読者の暮らしに役立つ記事を届けることが喜び。韓国コスメが好き。

Column

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暮らし上手な方々が日頃愛用している道具や家具をじっくりと拝見! 選ばれたものたちが、快適な暮らしにどう役立っているのか、その魅力をひもときます。もの選びの参考にぜひ!

 

2022.09.23(金)
文=松山あれい
撮影=平松市聖