大人の自分が感動する瞬間

 2001年より連載がスタートし、アニメ化でさらに人気を集めた『金色のガッシュ!!』は、大人になって改めて読んでも、感動を覚えた作品だそう。

「冒険譚、青春群像劇として純粋に面白いので、昔から楽しんでいたマンガです。作者の雷句誠さんが新たに出した完全版を全巻買ったら、やっぱり面白かった。まさに名作だし、今の僕にとっても前向きになれるものでした。年齢問わず誰もが楽しめる作品です」

 主人公は頭脳明晰すぎて学校で浮いている中学生・高嶺清麿と、清麿の父がイギリスから息子のもとに送り出した魔物の子ガッシュ・ベル。不登校ぎみだった清麿と、魔物としては落ちこぼれだったガッシュという凸凹コンビの前には、幾度も高い壁が立ちふさがるが、彼らは決して諦めない。

「ギャグの感じが僕には合っていましたし、プロットの構築もきれいだなと思います。魔物の子という未成熟とも言えるキャラクターが、人間の子どもや時々大人と関わり、少しずつ成長していく。僕たちの実生活にも照らし合わせられるところがいいんです」

 知人に薦められて夢中になったのが『BLUE GIANT』。仙台に住む高校生の宮本大が、世界に通じるサックスプレイヤーを目指す道を描いていく大作だ。大が環境を変えるごとにタイトルも変わり、現在は第3部『BLUE GIANT EXPLORER』が連載中。

「音がないのに音が聴こえる、マンガなのに演奏が目に浮かぶと言われている作品ですが、まさにその通りだと思います。ジャズの知識がない僕でも熱気のある描写にグッとくる……というのが最初の感想です。主人公の大がどんな環境やコミュニティにいても、変わらずに自分を貫く姿勢に影響を受けたし、美しいと感じました。羨ましいけれど真似はできないなと思いながら、楽しませてもらいましたね」

 大の生き様に役者として影響された部分は大きかったとも語る。

「メンタル面で共感する所は多かったですね。でも、自分と重ねたいけど重ならない人物です。ともするとわがままとも取られるようなエゴイスティックさは、僕ら役者も持っています。ですが常にプロとしての責任を問われる以上、彼のように“自分”を押し通すことはできない……。デビュー直後の僕だったら気づかなかった感情でしょうけどね」

2022.09.19(月)
Text=Tomoko Ohmagari
Photographs=Masahiro Sambe
Styling=MASAYA
Hair & Make-up=Yuri Kitahara

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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