ずっと忘れられない大切な作品
西山さんが特別ずっと大切にしている作品が2つあるという。
「小学生のとき読んだ『漂流教室』は、楳図かずお先生節炸裂のホラータッチの絵柄も相まって衝撃的でした。主人公・高松翔の通う小学校が突然、未来に飛ばされてしまうという物語。子どもたちがいなくなった世界で翔のお母さんはひとり、誰にも信じてもらえなくても息子を懸命に捜し続けるんです。
自分を犠牲にしてでも息子を助け出そうとするエネルギーは、愛ですよね。誰かを一途に想うことの大切さを実感した作品です」
中学時代、クラスで再び『漂流教室』が流行。クラスメイトと「自分だったらどうするか」を話し合ったことも懐かしい思い出だ。
「先日、六本木で行われた『楳図かずお大美術展』に中学時代の友達と行ってきたんですよ。コラボカフェでパフェを食べながら『漂流教室』の話で盛り上がりました。友達との思い出も含めて大好きな作品ですね」
そして『ニューヨーク・ニューヨーク』は、西山さんが折に触れて紹介している作品。ニューヨークで暮らすゲイの男性たちが、ありのままに生きられなかったり周囲に咎められたりという、直面した現実を描いている。
「姉に薦められて買った作品です。羅川真里茂先生の『赤ちゃんと僕』が大好きだったのですが、全く違う作風で驚かされました。いわゆるBL作品ではなく、同性愛の人たちの人生に真摯に向き合った物語。これほどシビアに同性愛を描いた作品に出合ったのは初めてでした。
主人公の警察官ケインは愛する人に出会えて幸せな一方、職場ではそれを隠している。30年近く前の作品ですが、現代も環境は変わっていないような気がして、寂しいことだなと思いますね。多くの方に読んでほしいです」
~インタビューの最後に、表紙撮影のメイキング動画を公開しています。ぜひお楽しみください!~
人生で影響を受けた2作
『漂流教室』楳図かずお
学校ごと未来に飛ばされた子どもたちが生き抜くさまを描く、楳図かずおの代表作。「初めて読んだときは怖すぎて、料理している母に泣きつきました」小学館文庫 各639円 全6巻
『ニューヨーク・ニューヨーク』羅川真里茂
NYで生きるゲイの人々が直面する問題を正面から描く。「偏見や罵声を浴びることが日常だったなんて。ひとりでも多くの人に読んでほしいです」白泉社文庫 各734円 全2巻
2022.09.07(水)
Text=Tomoko Ohmagari
Photographs=Osamu Yokonami
Styling=Toshihiro Muratome(Yolken)
Hair & Make-up=AKi