心の余裕のために本当に必要なのは「自問自答」だと思う

――佐奈がCEOを務める会社「ドリームポニー」は設立3年目。「スタートアップは最初の3年が肝心」とも言いますが、杉野さんのデビュー後3年間はどんな感じでしたか。

 振り返ってみると、デビューしてからの3年間は宙ぶらりんだったなと思います。僕も大学生の延長線上でこの仕事に入ったところがあるので、自分の気持ちが定まらず、「仕事」という意識がないままやっていたところはありました。

 特に最初の頃は「自分はこの道を進んで良いんだろうか」とめちゃくちゃ模索していました。

 「この世界にいることにこだわりはあるんだろうか」とか、「お金や名誉のためなのか?」とか、仕事をやめられない理由や疑問を次々と洗い出して、迷いを削ぎ落としていきました。それで最終的に自分の中に残った答えが、シンプルに「演技することがめちゃくちゃ楽しい」ということだったんです。そこで宙ぶらりんだった気持ちが定まりました。

――仕事をする上で、「こうありたい」と心掛けていることはありますか?

 自分から仕事を楽しめる環境を作っていきたいと思っています。常に目の前のことを楽しめる自分でいたいし、「仕事するのが楽しい」と思っている人たちと一緒にいられることもとても楽しいので。そのためには周りにいる人との関わりも含めて、率直に「合わないな」と思った感覚は大切にしたいなと思っています。

――もし、どうしても「価値観が合わない、苦手だな」と思う人が周りに現れたら?

 「輪になること」ってもちろん大事だと思うし、みんなが目指すところだと思うんですけれど……、自分の中で判断する軸をはっきりさせておく必要性があると思います。

 自分の本音を隠して無理やり人の輪に入っても、言いたいことが言えなかったりして結局自分の思い描いていたことは実現していかない。「この人とはあまり意見が交わることはないな」と思ったら、無理に全員と輪になろうとはせず、その代わり、自分の仕事を精一杯やるだけだなと思っています。

――今回のドラマを含め、ここ数年は映画「東京リベンジャーズ」など話題作への出演が続き、さらに23年の大河ドラマ「どうする家康」では榊原康政役で出演が決定するなど、お忙しい日々を送っているかと思いますが、リフレッシュはちゃんとできていますか?

 意識的に息継ぎをするようにしています!

 昨年の4月ごろはドラマと映画を短いスパンで同時に撮っていて、片方がクランクアップした翌々日には舞台「夜への長い旅路」の稽古が始まって……もう自分でも訳が分からなくなっていました。その時はリフレッシュなんてしていなかったし考えてもいなかったけれど、同時に「息継ぎって大事だな」と実感しました。

 でも心の余裕のために根本的に必要なのは、自分の心に向き合って、己の心を知ることだと思うんです。「自分はどんなことを嫌だと思うのか」と自問自答して、そこから必要ないことを削ぎ落としていくことで、結果的にリフレッシュできるんじゃないかな。

――そんな今の杉野さんにとって、仕事とは?

 ある意味、当たり前になっているものかも。僕は今仕事がとても楽しいけれど、「これは楽しいんだ」って自分に言い聞かせて鼓舞しているわけじゃなくて、やりたいからやっているだけで、「仕事」っていう感覚もあんまりないんです。

 もちろんしんどい時もあるから、「仕事」を意識しているときには「それ、本当に心から楽しめてる?」と、自分自身にたまに問いかけたいと思います。

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杉野遥亮(すぎの・ようすけ)

1995年9月18日生まれ、千葉県出身。2017年公開映画『キセキ―あの日のソビト―』で俳優デビューしたのち、さまざまなドラマや映画で活躍。近年の主な出演作に、映画『東京リベンジャーズ』、ドラマ「僕の姉ちゃん」、「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」など。2023年大河ドラマ「どうする家康」では、榊原康政役で出演する。

ドラマ『ユニコーンに乗って』

2022年7月5日(火)22:00スタート
出演:永野芽郁、西島秀俊、杉野遥亮、坂東龍汰、前原 滉、石川恋、青山テルマ、広末涼子ほか 
監督:青山貴洋ほか
脚本:大北はるか
製作:TBSスパークル、TBS
©TBS

2022.07.01(金)
文=根津香菜子
撮影=釜谷洋史