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 気づけばすっかり秋。和菓子の世界では、深まりゆく秋の味が出そろい、眺めるだけでも季節を感じます。

 今回は、「TORAYA GINZA」ならではのつくりたてをいただける秋の美しいきんとんや隠れ名物のお赤飯をご紹介しましょう。


3色のそぼろが香る秋の花のきんとん

 白、黄、橙と3色のそぼろを纏った美しいきんとん。こちらは、秋になるといい香りで楽しませてくれる「金木犀」が主役のきんとんです。グラデーションのようなそぼろは、濃く煮出した金木犀茶で風味をつけています。

 中心の白餡には、粉砕した金木犀の茶葉を混ぜ込んでいるので、より強く香りが漂います。

 つまり、見た目だけでなく、お茶を加えてほんのりと香る外側のそぼろから、茶葉自体を混ぜて強く香る餡へと、香りのグラデーションも楽しめるのが醍醐味なのです。

 こちらを考案したのは、菓子職人の和多利明さん。

「もともと金木犀の香りがとても好きなんです。秋に散歩していると、どこかから金木犀の香りがしてくることがありますよね。ついつい近づいて行って、花を見つけて香りを楽しんでいます。そんな個人的な秋の楽しみをお菓子に表現しました」(和多利さん)

 また、トッピングには、クチナシで染めた琥珀糖を散らして。キラキラと金色に輝くので、金木犀の花を思わせます。

 また、添えられた干琥珀もポイント。さくっとした繊細な食感が心地よく、ハーブのレモンマートルとレモンバーベナ、レモン果汁を使った、やさしく上品な酸味を味わえます。金木犀のお茶の香りと驚くほど相性がいいので、そのまま味わうのはもちろん、きんとんをいただきながら途中で少し齧ったりと、楽しみ方はいろいろ。

2025.10.12(日)
文=CREA編集部
写真=志水 隆