#250 Iki
壱岐(長崎県)

 玄界灘に浮かぶ長崎県の島、壱岐。天気がいい日には国境の島、対馬の島影を望むこの島は、紀元前から大陸からの人々との行き来があったようです。

 日本のことが初めて記された文献「魏志倭人伝」では「一支国(いきこく)」として、当時の様子が記述されています。大陸の人々が邪馬台国へ向かう途上、壱岐へ立ち寄っていたようです。

 古事記の国生みの神話では、最初に“大八島”と呼ばれる8つの島が作られ、そのひとつ、5番目に生まれた「伊伎島(いきしま)」として、登場しています。

 また、長崎県にある約450基の古墳のうち、約6割にあたる280基がこの島で発見されています。東西約15キロ、南北約17キロ、それほど大きくはない島ながら、日本史上において重要な意味をもつ存在だったのです。

 島のいたるところで鳥居を見かけ、神社の数にして150、小さな祠も含めると1,000を超すと言われています。いわば島全体が、パワースポット!

 山がちの起伏に富んだ対馬に比べ、平地が多い壱岐。一支国の王都があった“原(はる)の辻遺跡”が広がる深江田原(ふかえたばる)を中心に、長崎県で2番目に広大な平野が広がっています。

 そのため、米や麦などの農作物や海の幸に恵まれ、食材が実に豊か。今、問題になっている日本の食料自給率も、壱岐は優等生。

 今回滞在した「壱岐リトリート 海里村上」の総支配人兼料理長にして、地元出身の大田誠一さんに話をうかがいました。

 かつては仕事明けに畑仕事をして、家族で食べる分をご近所どうしで手伝って収穫していたそうです。8月下旬に刈り取られた稲穂は、掛け干しによってゆっくりと乾燥させます。そうすると、米本来の旨みが味わえるそうです。この時いただいたお米は大田さんが育てたものだったとか。たしかに美味!

2022.06.18(土)
文・撮影=古関千恵子