自然に還ることは、人間のDNAに刻まれた湧き出る欲求。だから、心が求めるままに、森の息吹、大地のエネルギーを感じる湯へ向かおう。
北海道中南部の白老温泉に、2022年に開業した「界 ポロト」はシラカバやトドマツに囲まれた、自然と一体化できる宿。慌ただしい日常を離れ、心を解放する時間を約束してくれる。
原始の森に抱かれた、静かな湖畔ステイ
●界 ポロト[北海道/白老温泉]
![ポロト湖と樽前山が一望できる特別室の露天風呂。世界でも珍しい太古の植物由来有機物を含有するモール温泉を、ひとり占めできる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/e/1280wm/img_dedee28008a838b0265c55240fb42c20138558.jpg)
モール温泉と湖が ひとつになるような錯覚
視界すべてに大自然が広がるような場所に行きたい。雄大で、空気が澄みきっていて、心ゆくまで温泉に身を任せられる所へ。そんな思いで向かったのは、北海道・ポロト湖畔の宿だ。
南西部に位置する白老町の市街からすぐの場所にありながら、原始の自然休養林や湿原が周囲に広がるポロト湖。アイヌ語で「大きな沼」という意味をもつこの湖のほとりに今年開業したのが「界 ポロト」だ。全室レイクビューというロケーションに加えて、世界でも珍しいモール温泉が楽しめる。
![敷地内にポロト湖を直接引き込み、館内各所に何本ものシラカバやトドマツの丸太を配した大胆な設計デザインにより、施設のどこにいても自然の中を歩いているよう。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/8/3/1280wm/img_835da7bab1efe31c45aea2cba0b9e8c5184282.jpg)
客室に足を踏み入れたとたん、大きな窓いっぱいにポロト湖の景色が広がる。湖面を渡る銀色のさざなみ、緑豊かな森林。まるでプライベートレイクのような贅沢さだ。湖面にせり出すとんがり屋根は、モール温泉の湯小屋「△湯」。太古の植物に由来する有機物が含まれ、“美肌の湯”ともいわれるモール温泉は、茶褐色の湯がとろりとなじむような肌触り。露天風呂の先はポロト湖へと続き、湖面を漂うような解放感が湧き上がってくる。
![「△湯」では、源泉かけ流しの内湯や湖にせり出した露天風呂で美肌の湯といわれるモール温泉を堪能。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/0/1280wm/img_303ce43b2e2bb35770f04a3f8b4c24b3104037.jpg)
![アイヌ文化の建築特徴である丸太組みの三脚構造「ケトゥンニ」を基本構造としたとんがり湯小屋。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/3/1280wm/img_43966da7fb93313dd101a7fa63f9e3c5113377.jpg)
夕食までの時間は、窓辺のソファでのんびりと。刻一刻と色合いを変えていく初夏の夕空が美しく、雲の流れにも北海道のダイナミズムを感じる。その豪快さは、夜の食事にも。北海道ならではの食材をふんだんに使った会席料理で、メインは、毛蟹や大きな帆立貝が丸ごと入ったブイヤベース仕立ての「毛蟹と帆立貝の醍醐鍋」。程よいサイズの地酒の飲み比べセットを合わせ、ひとりでじっくりと味わう。
![客室はすべてレイクビュー。アイヌ民族の伝統的住居「チセ」から着想を得て設計。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/d/1280wm/img_3ddef8cc974a1745dd01c1fddb6b93b0103126.jpg)
![夕食は北海道の食材を生かした会席料理。特別会席の「毛蟹と帆立貝の醍醐鍋」は海の幸のスープが濃厚!](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/d/1280wm/img_7d5360f018d69f0c1437a15e42ea28bb137683.jpg)
2022.06.08(水)
Text=Yuko Harigae(Giraffe)
Photographs=Tetsuya Ito
CREA 2022年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。