理想の俳優像、キーワードは「愛情」

――成田さんは俳優になる夢を叶えられましたが、どういう行動や意志によって叶えられたと思いますか?

 やっぱり出会った人のおかげです。 

 『ニワトリ☆スター』の脚本を読んだとき、「これは僕にしかやれません!」とかなた狼監督に宣言しました。それを面白がってくれて使ってくれました。そのご縁で『ニワトリ☆フェニックス』もご一緒することになりました。その後も舞台挨拶で地方の映画館を回り、素敵な映画館や素敵な先輩方に出会いました。

 興味を持ったらやる。飛び込む。そこに「この人に出会えた」というのが一つでもあれば、それは宝になります。常にポジティブに。健康であることも大事だと思います。

――ご自身のことだけでなく、製作現場、作品全体など、俯瞰して考える視点は、子供のころからお持ちだったのですか? 

 そうですね……子供のころ、サッカー部のキャプテンだったんです。年上の人たちと一緒に練習をしたりしているうちに、自然に培われたのかもしれませんね。父もずっとサッカーをしていて、物心ついたときから、集まりなどにも連れて行ってもらっていました。そういうなかで、身についてきたのかもしれないです。

――理想の俳優像はありますか?

 愛情がある人かな。作品にも人にも愛情がある人。愛情があるから怒ることもあるだろうし、優しくもなれるだろうと思います。愛情だけで作品はできるんだと最近、学びました。

――俳優をしていて喜びを得る瞬間はどういうときですか?

 いい人と出会ったときです。ああ、この人好き! と、人として尊敬できる人、一緒にいるだけで勉強になる人と出会ったときに嬉しくなります。

――成田さんがオープンでいらっしゃるから、素敵な人にたくさん出会えるのでしょうね。

 「オープンでいなさい」と教えてくれたのは(井浦)新さんなんです。

 携帯ばかり見ていたら、自分の好きな情報ばかり入ってきて、なんとなくの情報で良い悪いの判断もなしに流れていってしまうけれど、周囲を見渡したら、いろんな人がいることに気づきます。散歩しているだけでも、いろんな人を目にします。

 悪い人に出会ったときには反面教師にすればいいし、いい人に出会ったら、リスペクトするところをまねてついていけばいい。そうして、日々変化していっています。

成田 凌(なりた・りょう)

1993年生まれ、埼玉県出身。2014年に俳優デビュー。最近の主な出演映画に『カツベン!』(19年)、『弥生、三月—君を愛した30年』(20年)、『まともじゃないのは君も一緒』(21年)、『くれなずめ』(21年)、『ニワトリ☆フェニックス』(22)。ドラマに、連続テレビ小説「おちょやん」(21年 NHK)、『逃亡医F』(22年 日本テレビ)など。初舞台「パンドラの瞳」が22年6月6日から上演、映画『コンビニエンス・ストーリー』が22年8月5日に公開。

Huluオリジナル「あなたに聴かせたい歌があるんだ」

原作:燃え殻
脚本:藤本匡太、燃え殻、萩原健太郎
監督:萩原健太郎
出演:成田凌、伊藤沙莉、藤原季節、上杉柊平、前田敦子/田中麗奈
2022年5月20日Hulu独占配信〈全8話〉

story
高校2年の夏。クラスの生徒たちは臨時の英語教師の過去をあばき、嘲笑した。27歳の教師は生徒に向かい、誰もが10年後には27歳になること、そのときに後悔することがないよう本気で願っている、と唇を震わせながら言い、キリンジの「エイリアンズ」を流す。役者、アイドル、バンドマン、作家……それぞれの夢を抱え、生徒たちがどんな27歳を迎えたのか。それぞれの物語が語られる。

2022.05.20(金)
文=黒瀬朋子
撮影=深野未季