滑稽に見えてほしい、というのは常にあるかな
――成田さんは、過去のインタビューでもご家族が支えとおっしゃっています。夢を持って家を出てきたからこそ頑張らなきゃ、というような思いはありますか?
家族も(自分の活躍を)楽しんでくれているので、そういう気負いは特にないです。好きな仕事をして成長する過程を喜んでくれています。ただ、いろんなものを見せたいなとは思いますね。
――本作は27歳というのがキーになっていますが、ご自身では「27歳」をどういう年齢と感じていますか?
撮影していたときがちょうど27歳でした。まだまだ“登り途中”だと思います。登りながら、知らない風景をたくさん見たいですね。知らない風景に出会うたびに、自分に足りないものを知り、もっと頑張ろうと思います。
登り途中は楽しいですが、その後どうなるかは誰にもわかりません。
よく「10年後どうしたいか」という質問をされますが、正直わからない。どんな人間と出会うかで人は変わると思うので、いい人に出会えるような生活をしていきたいです。
――本作に限らず、成田さんは、近年では『ニワトリ☆フェニックス』の楽人や『くれなずめ』の吉尾でも、笑顔のなかに悲しみを滲ませたり、眼差しのみで相手に訴えかけるなど、言葉以外で複雑な感情を丁寧に表現されているように感じます。役によるのでしょうが、どんなことを意識しながら演じていらっしゃいますか?
滑稽に見えてほしい、というのは常にあるかな。一生懸命生きている人間の滑稽さみたいな。全ての役に共通しているわけではないですが、笑わすのではなく、笑われる方向を選んでいきたいというのはありますね。
荻野でいうと、いつもヘラヘラしているので、喋っているのに何も話してないみたいに、空虚すぎて言葉が空間に溶けていっているような感じになったらいいなと思っていました。「荻野の言葉、一言も覚えてない」と思われるような。
6人、皆個性がありますけど、みんなが主役となると、第1話の人間は無色透明がいいんじゃないかと考えていました。
――全体のことを考えていらっしゃるんですね!
こういう表現ができることは珍しいと思います。今回は作品全体が輝いていればそれでいいと思いました。
2022.05.20(金)
文=黒瀬朋子
撮影=深野未季