CREA Traveller 2026 夏号は「ポルトガル」特集。ヨーロッパ大陸の西の果て、大西洋の大海原を見つめてきたポルトガルの歴史と文化には、海との繋がりが常にあった。郷愁を表現する“サウダーデ”を胸に秘めた情緒的な側面に触れ、海風と太陽、人々の温もりで健やかな感性を取り戻す旅へ。

CREA Traveller 2026 夏号
海風と太陽に誘われてポルトガルに会いに行く
特別定価 1,800円
リスボンの街全体を彩るアズレージョ。
その美を300年近く支え続けるヨーロッパ最古の工房「サンタナ」を訪ね、職人の手仕事が紡ぐ「光と影」の伝統の粋に触れる。
ヨーロッパ最古の工房で識るポルトガル伝統の美
リスボンの昔ながらの住宅街に佇む「サンタナ」は、1741年創業のヨーロッパ最古のアズレージョ工房だ。元は焼き物全般を作る工場だったが、1755年のリスボン大地震を機に、壊滅した街の復興を支えるアズレージョ専門工房となった。
現在も30名ほどの熟練の職人が籍を置き、18世紀から変わらない完全なハンドメイド製法を守り続けている。
ここの職人技の象徴が、絵の左側に太陽光を感じさせる「光と影」の鉄則だ。街を彩る壁面のアズレージョ絵画を見てみてほしい。「サンタナ」が手がけた作品ならば、描き込まれた陰影の妙によって絵が立体的に目に飛び込んでくるのだ。
光を表現するために左側の輪郭は繊細な細線で、影となる右側は太く濃いラインで描き分ける。すると14センチ四方のタイルの平面に息を呑む立体感がもたらされる。
しかし工房のスタッフは言う。アズレージョの美しさの本質は、タイル一枚一枚に刻まれる「時」そのものにあると。手仕事ゆえに同じ表情の作品がなく、歳月を経て雨風に晒されることで表面が削られ独特の味わいへと育っていく。今日店頭で手にする一枚のタイルは、数十年後、美しく老いた唯一無二の骨董品へと昇華するのだ。
何世紀もの時の記憶と職人の魂を宿すアズレージョ。伝統的な手法を用いる工房は国内でもわずかになった。
ここでしか出合えない本物の伝統が、「サンタナ」には息づいている。
サンタナ(Sant’Anna)
所在地 Calçada da Boa-Hora 96,Lisboa
電話番号 213 638 292
営業時間 9:30~12:30、13:30~18:00
定休日 土・日曜
https://santanna.com.pt/
CREA Traveller 2026年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。
