漢字を骨格に持ちながら変化を遂げた「和様の書」
さて。心構えはできたとして、今さらながら、展覧会のテーマである「和様の書」とはなんだろう。そもそも話し言葉としての日本語はあっても、それを書き記すための文字がなかった日本は、中国で発展した漢字を採り入れ、日本の言葉を表記するために、さまざまな工夫を凝らしながら用いてきた。やがて平安時代前期に遣唐使が廃止され、和歌などの文芸を中心に日本的な文化が成熟していく過程で、9世紀末から10世紀初め頃にかけて、漢字を骨格に持ちながらも日本オリジナルといえる段階まで変化してしまった平仮名(=女手:書き手の性別ではなく曲線的でたおやかな字形や書きぶりの比喩。万葉仮名を楷書や行書で記した文字を男手と呼び、それが漢字の崩しとは見えないまでに変化したものを女手/平仮名と呼ぶ)、片仮名という2種のかな=「和様の書」が完成する。こうして完成した日本オリジナルの書きぶりで書かれた、優美で柔和な書の名品ばかりを集めたのが、今回の展覧会だ。
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2013.08.10(土)