歌川国芳画「相馬の古内裏」 江戸時代 公文教育研究会所蔵(7/6~8/4展示)
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 美術の世界も「夏休み企画」目白押しのシーズンだが、子供向け展覧会ね、などと甘く見てはいけないのがこの「大妖怪展」。月へ、深海へと、科学と理性の光が世界をあまねく照らし出してしまったように見えても、人の心のほの暗い場所から湧き上がってくるイマジネーションを消すことは難しい。というより、そのバリエーションの豊かさを見るにつけ、人間にとってとても重要なものなのではないか、とも思わされる。

月岡芳年画「新形三十六怪撰 おもゐつづら」 明治時代 国立歴史民俗博物館所蔵(7/6~8/4展示)
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 今回の展覧会は、中世から近代までの日本の妖怪変化の歴史を、能面から絵巻、浮世絵、版本などの優品でたどり、現代の「妖怪画家」を代表する水木しげる氏の妖怪画へといたる、「怪異」な造形の系譜を俯瞰する、という構成。正統派ど真ん中の美術作品に堂々と登場する「怪異」の造形の妙を、子供だけに独占させてはもったいない。オトナの美術ファンにもぜひ足を運んでほしい展覧会だ。

 さてまず登場するのは江戸、浮世絵の妖怪だ。作品を三枚続きのワイドスクリーン画面にし、これまでにない迫力を演出した歌川国芳の《相馬の古内裏》や、幕末の世相を反映した「血みどろ絵」で知られる月岡芳年、あるいは有名な歌川広重が《名所江戸百景》で描いた怪現象「狐火」、また珍しいところでは、妖怪の夢を見てうなされる子供を起こそうとする母親を描いた喜多川歌麿の《夢にうなされる子どもと母》などを見ることができる。

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2013.07.27(土)