20世紀を代表するモダニズム建築の巨匠のひとりとして知られるル・コルビュジエ。彼の全生涯を回顧する展覧会が6月15日からニューヨーク近代美術館で始まった。「ル・コルビュジエ:モダン・ランドスケープの世界地図」と題されたこの展覧会は、ランドスケープ(風景)という視点から偉大な建築家の生涯を振りかえる試みだ。ル・コルビュジエが後世に残したのはサヴォワ邸をはじめとする優れた建築作品だけではない。ドローイングや絵画などの平面作品、写真、建築論や都市論、旅行記などの著作も多い。この展覧会ではそれらを駆使して、ル・コルビュジエの建築にとって風景が持つ意味を解き明かしていく。
展覧会は78年に及ぶ生涯を5つのセクションに分けて紹介している。最初は1887年にスイスのジュラ地方で生まれたル・コルビュジエが建築家を志し、パリやベルリンの有名設計事務所で働くようになるまで。2番目は1917年にパリで自らの事務所を設立し、革新的な住宅作品を発表すると同時に、多くのマニフェスト的著作でモダニズム建築の第一人者の地位を確立した時期だ。そして1920年代後半からル・コルビュジエの関心は、都市をデザインする都市計画へと拡大。3番目のセクションでは1930年代にアルジェリアや南米で彼が構想したプロジェクトに焦点が当てられている。そして4番目は第二次世界大戦後にインドのチャンディガールで実現した大規模な都市計画。最後が集合住宅のユニテ・ダビタシオンやロンシャンの礼拝堂を中心とした晩年の15年間の仕事となっている。
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2013.06.26(水)