宮城、岩手、福島と東北三県をエツコ&ジョー・プライス夫妻の江戸絵画コレクションが回る「若冲が来てくれました プライスコレクション 江戸絵画の美と生命」展は、現在岩手県立美術館で開催中。江戸絵画は好きだけど東北まで行けないよ、という関東以西の美術ファンにぜひ足を運んでほしいのが、「ファインバーグ・コレクション展 江戸絵画の奇跡」展だ。こちらも江戸東京博物館を皮切りに、滋賀県のMIHO MUSEUM、鳥取県の鳥取県立博物館をめぐる、11月までの長期ツアーが予定されている。
ロバート&ベッツィー・ファインバーグ夫妻が収集を始めたのは1970年代のNYでのこと。以来約40年、一代で築き上げた肉筆画を中心とするコレクションは、江戸から京都・大坂で活躍した民間の絵師たちの作品が中核を占めている。
この頃の日本では、経済的に余裕のある庶民層が家を飾り、あるいは純粋に眺めて楽しむために、掛け軸や屏風を購入したり、絵師に依頼して描かせる、といったことができるようになってきていた。それまで政治的・宗教的な権力に従属することでしか生きていけなかったものが、より広い顧客を対象に、自らの好みのままに絵を描いていける絵師が少しずつ増えていったのだ。
それ以前の絵師たちが、わずかな例外を除いて狩野派や土佐派など既成の流派に所属し、流派の画風を頑なに守っていたのに対して、18世紀の江戸や京都には、個性を競い合う革新的な絵師が相次いで現れる。これは8代将軍・徳川吉宗が政権に就き、幕府が率先して中国やオランダから外来の知識や技術を学ぼうとした、積極的でオープンな進取の姿勢が社会全体に行き渡ったことも理由のひとつだろう。ファインバーグ・コレクションが収集の対象にしたのは、そうした絵師たちの作品なのだ。今回は展示を5つのパートに分け、93件をテーマごとに紹介していく。
2013.06.08(土)