ユーモラスでかわいらしい、動物や器物が擬人化された「妖怪」
で、真打ちの「妖怪」はというと、こわいというより、ユーモラスでかわいらしい。動物を擬人化した《鳥獣人物戯画》に通じる《十二類合戦絵巻》は、十二支の動物たちが集まった歌合会で、判者(審判)をやりたいと申し出たものの、散々馬鹿にされて追い払われた狸が、恨みをもって戦を仕掛け、一度は優勢になりながらも、結局十二支軍に敗れ、出家してしまう、という物語。蛇が女性に擬えられていたり、狸がずるがしこそうだったり、擬人化の進んだ動物たちの姿は、確かに妖怪めいている。
動物どころか、器物も実は生きている、と考えてしまうようになるのは、経済的な発展によって庶民の間でも「もの」──さまざまな道具が豊かに出回るようになった室町時代以降のこと。《付喪神絵詞》に描かれた琵琶や琴などの楽器、角盥や籠などの調度品が手足を生やした姿や、妖怪たちが深夜の町を列をなして行進するさまを描いた《百鬼夜行絵巻》は、まさに「まんが日本昔ばなし」でお馴染みの世界を彷彿とさせる。
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2013.07.27(土)