日本の妖怪中の妖怪、荒ぶる神が擬人化された「鬼」

 続いて紹介するのは由緒正しい(?)日本の妖怪中の妖怪である「鬼」。「鬼」とは「隠」=おん、が変化したもので、隠れて人の目に見えないもの、死者の霊魂や精霊を意味していたものが、やがて仏教の羅刹と混同され、餓鬼、地獄の青鬼、赤鬼などに、また、美男、美女となって人間の世界を跳梁跋扈するようになった存在だ。このコーナーでは、菅原道真の怨霊が雷神(赤い身体に角を生やしたビジュアルはまさに「鬼」!)となって祟りをなすエピソードから、《北野天神縁起 弘安本》や能面《天神》を紹介。また鬼の典型である《顰》や、怨念を持った貴人や驕慢の高僧などが姿を変えた天狗としての《大癋見》《牙癋見》、女性の怨念が極まって角が生え、鬼となった姿を現す《蛇》(「道成寺」専用の面)など、能に登場する数々の異類の面も展示される。

重要文化財「北野天神縁起 弘安本」 鎌倉時代 東京国立博物館所蔵(7/6~8/4展示) image:TNM Image Archives
左:重要文化財 能面 「顰」 室町時代 三井記念美術館所蔵(会期全日展示) 
右:重要文化財 能面 「蛇」 室町時代 三井記念美術館所蔵(会期全日展示)

<次のページ> ユーモラスでかわいらしい、動物や器物が擬人化された「妖怪」

2013.07.27(土)